第47話 ページ49
ザザァン
波の音が一定の間隔で空気を震わせる。
(っ、冷たっ)
水に浸かった足はパシャっパシャっと波が打ち寄せるたびに音を立て、しぶきをあげる。
風が吹いて、髪押さえながら振り向くと、降谷さんは私の2メートルほど後ろでズボンのポケットに手を入れて少し俯きながら波を弄んでいる。
(様になるなぁ)
「零」
呼びかけると降谷さんはパッと顔を上げて首をかしげる。
「どうした」
「いえ、呼んだだけです」
ちょっと呆けた降谷さんの表情にクスクスと笑いながらそう告げる。
降谷さんはそうかと呟きながら片手で自分の目を覆う。
「降谷さん?」
「……あまり可愛いこと言うなよ」
「か、かわ!?」
はーと息を吐き出して、少し赤くなった頬と上目遣いで睨まれる。
(え、可愛いって言われた?可愛いって、え?言うなよって、あっ、発言のことか。発言が可愛いって、うわぁそれはそれで恥ずかしい…)
なんとも言えない空気が広がる。でもそれが居心地悪いとかそんなことではなくて、むしろもっとこうしていたいような気もして、私は降谷さんとの距離を詰める。
昨日塗り直した桜貝の色のペディキュアが足をあげるたびに光る。
「れーいっ!」
「なんだ」
「隙ありっ」
パシャっ
服が濡れてしまわない程度に水をかける。
「なっ」
「ふふ、そんなことでは公安警察は務まりませんよ〜」
仕返しをされる前に走り出す。
「あっこら」
追いかけ出した降谷さんから逃げるも、すぐに追いつかれ後ろから抱きしめられる。
「わっ」
そのまま体重をかけられて転けそうになり慌ててバシバシと降谷さんを叩く。
「待って待ってごめんなさい私が悪かったです、ちょっとした出来心だったの、転けちゃう転けちゃうって、わっ」
寸でで腕を引かれて体制を戻す。
「もうっ危なかったじゃない!」
自分から仕掛けたことを棚に上げて拗ねてみると降谷さんはクスクス笑いながらケンカを売ったのはどっちだったかなと目を細める。
「かまって欲しかったので、ごめんなさい」
そう溢すと降谷さんはめい一杯に目を見開いてまた片手で目を覆う。
「今度は確信犯だな」
「バレました?」
してやったりと笑うと、突然降谷さんに抱き寄せられて、そのたくましい腕に座らされる。
「えっちょっと」
体重重くないかなとか色気のない思考がよぎったりもして、それもお見通しと言わんばかり降谷さんは笑う。
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あふらん(プロフ) - すごく面白いです!夢主の性格が本当に好きです。もしかしてクズの本懐知ってますか?意識されてる様なところがあった気がしたので、もしかしたらと思いました。違ったらごめんなさい! (2019年3月28日 12時) (レス) id: d39cf90419 (このIDを非表示/違反報告)
黒木朔(プロフ) - バニラさん» バニラ様、メッセージありがとうございます。うわ、本当に、お恥ずかしい。早急に修正させていただきます!本当にありがとうございます!! (2019年1月3日 10時) (レス) id: 1361aa9fb6 (このIDを非表示/違反報告)
バニラ(プロフ) - 論理ではなく倫理じゃないでしょうか (2019年1月3日 1時) (レス) id: f20c080281 (このIDを非表示/違反報告)
黒木朔(プロフ) - ハク様、メッセージありがとうございます。嬉しいです!これからもよろしくお願いします!! (2018年12月31日 19時) (レス) id: 1361aa9fb6 (このIDを非表示/違反報告)
ハク - とても面白い作品で一気読みしてしまいました!応援してます♪ (2018年12月31日 18時) (レス) id: 6941855deb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒木 | 作成日時:2018年12月30日 17時