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第36話 ページ38

「ねぇ、ここって…」

「え?あぁ、気がつきました?」

会場に広がるのは淫靡な空気。
重苦しい熱と、ねっとりとした湿気がまとわりつく。

「このパーティーは会員制なんですよ。人間の本能を隠す必要などない、甘美な欲望を満たす会。貴女はここで女王となり、全てを手に入れることが出来る……貴女をここに連れて来たいとずっと、思っていました」

「望んでない」

「…僕が望んでいるんですよ」

男は微笑んで私の腰に手を回す。

「ほら、感じるでしょう?熱のこもった視線!貴女を求める視線です!!」

1人で興奮する男に震える手を握りしめる。
私がここから、逃れる方法は…

「ね、ここは…人が多いわ。私……見られるなら貴方だけがいい、貴方だけが私を見るの、………ここは、…嫌…」

自ら男の腕に自身の腕を絡ませる。男はゴクリと生唾を飲み込んで口角をあげた。

「わかってくれたんだね。僕のこと、これで僕と君は相思相愛だぁ」

一刻も早くその場を離れる策とはいえ、この後どうするか全く計画のない私は内心冷や汗びっしょりである。

(どうしよう、どうしようどうすれば…)

ドンっ

「おっと」

「きゃっ、すみません」

下ばかり見ていたせいかぶつかって転びかける。慌てて、男の腕にしがみついて、顔を上げれば、驚きのあまり目を見開いてしまった。

「安室、さん…」

「……こんばんは」

「A、知り合いで?」

どうしてこんな時ばかり呼び捨てで呼ぶの?どうしてこんなところで出会ってしまうの?

安室さんは男の腕に絡ませた私の腕を一瞥して私に笑いかける。

「僕はこれで」

細められた目がすれ違いざまにグッと開いて物語る。
綺麗な青が表すのは他でもない、軽蔑。


もともと軽蔑されるような事してたんだし、今更そんな目で見られたって、驚きはしないけど…

「さぁ行こうA。君のためにスイートルームを取ってあるんだぁ」


君を僕のものにするのもあと少し



耳元に囁かれた言葉が、鎖になってまとわりつく。

私が私を助ける方法。それは他でもない、私。

「ね、そんなスイートルームよりも、ずぅーと、ずぅーと……行きたいところが、あるの…わたし、……」

照れたように目を伏せて、顔を赤くしてから微笑む。

「貴方の家に行きたい」

グッと背伸びして男に囁き返す。

男は背筋を震わせ緩みきった顔で私に笑いかけた。

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あふらん(プロフ) - すごく面白いです!夢主の性格が本当に好きです。もしかしてクズの本懐知ってますか?意識されてる様なところがあった気がしたので、もしかしたらと思いました。違ったらごめんなさい! (2019年3月28日 12時) (レス) id: d39cf90419 (このIDを非表示/違反報告)
黒木朔(プロフ) - バニラさん» バニラ様、メッセージありがとうございます。うわ、本当に、お恥ずかしい。早急に修正させていただきます!本当にありがとうございます!! (2019年1月3日 10時) (レス) id: 1361aa9fb6 (このIDを非表示/違反報告)
バニラ(プロフ) - 論理ではなく倫理じゃないでしょうか (2019年1月3日 1時) (レス) id: f20c080281 (このIDを非表示/違反報告)
黒木朔(プロフ) - ハク様、メッセージありがとうございます。嬉しいです!これからもよろしくお願いします!! (2018年12月31日 19時) (レス) id: 1361aa9fb6 (このIDを非表示/違反報告)
ハク - とても面白い作品で一気読みしてしまいました!応援してます♪ (2018年12月31日 18時) (レス) id: 6941855deb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒木 | 作成日時:2018年12月30日 17時

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