未亡人は口ずさむ 2【降谷零】

第71話 ページ23

文章を脳内で構成して思いつくたびに打ち消す。暗号と言っても、意味深な言葉では疑われて書き換えさせられるだろう。なら埋め合わせに別の映画を観に行こうと誘い、その映画の内容が誘拐ものの映画であれば、気づいてくれるのではないかと思いついて、はたと気付く。よりによってそのメールを確認するのはベルモット。彼女は確か休業中のハリウッド女優ではなかったか。

(映画が駄目…なら本は？)

自分の知っている誘拐ものの本の中から1番それらしくない題名の本を探す。

「あら、彼に送るのね」

「コナン君を知ってるの？」

「えぇ、もちろん」

口元に笑みを浮かべながら私が渡した端末に目を通して頷く。

「このまま送るわよ」

「どうぞ」

同意を述べると、彼女は、送信ボタンをタップしてそのままスタンガンでショックを与えてスマートフォンを不能にする。

「悪く思わないでちょうだい」

「…GPS機能があるものね」

こんなところで文句を言ってなどいられない。あくまで平然を装って彼女の行動を肯定する。

(こんなことになるんだったら、もうちょっと気まずくても零と話をしてくればよかった)

今更後悔しても遅い。
私は悟られないようにため息をついて、視線を前の座席へと向ける。

「こんにちは。どちらがジンさんかは存じ上げませんが、私のこと気に入ってくれたみたいで？一体どのような了見で拐われてるのか伺ってもよろしいですか？」

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