陸拾壱夜 ページ11
「いいかい湊、僕は君を助けたいんだ、こんな姿になってまでも、君を愛しているんだ、知らないだろう、君を攫った化け物の正体なんて」
「っ、ゔっ…」
「きっと、君の身体には沢山、男の催眠による煙が渦巻いている、その煙は一種の毒なんだよ、甘い匂いで君を釣り、開花を促進させる、君を堕とそうとする為の罠だ、そんなものは消してしまえ」
「あ゛…ぅ、…」
鼻をつく刺激臭。
頭がガンガンと殴られているかのように痛い。
吐き気がする。
身体の中で、何かがぐちゃぐちゃと音を立てて、変わってしまうような、吐き出されるような。
分からない、もう何も分からない。
それでも、このまましんぺいと会えなくなるなんて、そんなのは嫌だった。
「さあ、さあさあさあ！戻っておいで！本来、湊が過ごすべきあの村で、僕ともう一度愛を育もう…？ああ、全ては君のせいでもあり、君を攫った男のせいでもあるんだ、いや、全ては男が悪いんだ、僕と湊の仲を、僕らを繋いでいた運命の糸を押しのけて、自分を湊と結びつけたんだよ、恐ろしい恐ろしい！」
「ぐ、っ…ゃ、だ…ゔ…」
「湊、君の手で断ち切るんだ、こんなのは正しくない、こんなのは運命じゃない、無理矢理結びつけられて可哀想に…ほら、早く、僕の元へ___」
ふわりと、何かに包まれた。
優しくて、大好きな匂い、体温、仕草。
ぐったりとした身体に鞭を打って、望む人を見上げた。
「…ごめん、遅くなって」
ふと思った。
それは、何な対しての謝罪なんだろう。
駆けつけるのが遅くなったことに対してなのか。
それとも、彼が、黙って私にしていたことに対してなのだろうか。
それならば、海の言う言葉は、嘘偽りのない、本当の言葉だということになるのに。
「…エーミール、二人を頼むよ」
「しんぺいさん、何を…」
「湊に触れたんだろ、なら、代償が必要じゃないか」
しんぺいの離れていく手を掴もうと、腕を伸ばしたけれど、意味を成さずに、その背中を見つめながら、意識を落とした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 554人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
都築(プロフ) - 失礼します。いつも楽しく読ませていただいてました!!完結しないのは残念ですが作者様も苦渋の決断だったと思います。それに作者様が悪いわけではないので謝る必要もないと思います。今までありがとうございました。お体には気をつけてくださいね。 (2020年3月24日 17時) (
レス) id: e5f03274fe (このIDを非表示/違反報告)
ピエロ(プロフ) - 初めてコメントとさせていただきます。物語に引きずり込むような書き方や構成で、想像がしやすく読んでいて楽しかったです。こちらこそ、ここまで読ませていただいてありがとうございました。今までお疲れ様でした。長文失礼致しました。 (2020年3月24日 17時) (レス) id: cbd310c627 (このIDを非表示/違反報告)
カランコエ(プロフ) - 自分で、決めたことに他人が口を出すことはいけないと私は思っています。些細なことでも、今まで頑張ってきた人が謝罪する必要はないと思います。少し、寂しい気持ちもありますが、今までお疲れ様でした。長文乱文失礼しました。 (2020年3月24日 17時) (レス) id: 9c69860077 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - 弑逆ノ桜さん» すみませんでした！！！めちゃくちゃ恥ずかしいです…あのまま気づかないところでしたありがとうございます！コメント嬉しいです！頑張ります！ (2020年3月23日 14時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
弑逆ノ桜(プロフ) - 陸拾弐が出てない気がします……違ってたらすいません……。更新の度にワクワクして読んでます!大好きです! (2020年3月23日 3時) (レス) id: db48fbe297 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そういろね | 作成日時：2020年3月17日 1時
