【d!】恋文は破り捨てて。【gr】 (ページ7)

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「でもまあ、本当に、お熱いことで」

『…他国に易々と情報を漏らしたお前に罰を与えたっていいんだぞ』

「女は捨てたんじゃなかったの」

『心配されなくとも、女は捨てたさ』

だから、あそこで私は彼を求めなかった。
それだけで十分だろう。
そう言えば、生々しいなぁなんて苦笑いを向けられた。
そちらから話を振ってきたくせに。
目を瞑りながら、静かに彼のことを考えていた。
今か今かと、私の到着を待ち侘びていたりするのだろうか。

「じゃあ、女心は捨ててないってこと？」

茶化した声でも、その鋭い目に籠る微かな怒り。
油断するな、自覚を持て。
こんな序盤で挫けるわけにはいかないし、何が何でも私はこの理想を成し遂げなければならない。
そうしなければ、きっと、この先平和なんて、地獄を見てからでしか叶わないのだから。

『そうだな、女心を捨てたら…それこそ、平和なんか求めるのも馬鹿らしくなるだろ、私が望むのは、喜んで誰かを待ち続けることだ』

「…まあ、貴女らしいっちゃ貴女らしいけど」

『何だ、不服か？』

「いいえ、俺の欲しかった答えですよ」

馬車が止まり、ぴくとが使者の様に扉を開けたので、仕方なくその手を取った。
目の前に広がる大きな軍基地…というよりは城に、高いヒールを鳴らして歩いた。
もうこの靴にもいい加減慣れた。
そして、力強く、下に見られない様な歩き方だって、誰よりも負けないほどに慣らしてきたのだから。

『ぴくと』

「はい？」

『私は一国の総統であり、お前の尊敬するあの方の娘であることもわかっているはずだ』

「ええ、そりゃ、勿論」

『ならば、お前はあの方と同じほど私を見てきたということになる』

遠目に、兵士が厳重に守る重圧感のある扉が見えた。
それを前に、鳴らしていたヒールを止めて、振り返った。
首を傾げながらこちらを見るぴくとの靴を尖った自身の靴で容赦なく踏んだ。
青い顔で悲鳴をあげるぴくとを見下げ、笑ってみせた。

『お前は、私の成長を見ていながらも、そうも簡単に私が崩れるとでも？はっ、無礼にもほどがあるな』

「…！」

『“いかにも、お前に煽られるのは悪い気がしないがな”、父がよくお前に言っていた言葉だ、残念ながら、私はあの方よりも健康体だからな、それに若い、お前の煽り口は私が死ぬ頃には治っているだろうな』

「…いい性格してるなぁ」

『あの方の娘だからな』

父の、人をどこまでも愛す性格は、私も愛していたのだから。