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何を考えているのだ!
すぐに目を逸らし、誰にも赤く火照った顔を見られないように俯き考えた。
“美しい”って、“見惚れて”って何だ。
女は捨てたのだ。
後継者たる者、総統たる者。
誰かを愛するよりも、国民を想い国民に尽くして、その為に周りの反対を振り切ってまで平和主義を掲げたのだから。
深呼吸をしてから、もう一度入り口を見た。


『何なんだ、あれは』

「最近怒涛の勢いで勢力を拡大している、という噂以外にもね、あの国はああいうのでも有名なんだよ、幹部が美形だとか、何だとか」


皮肉たっぷりのぴくとのその声に、苦笑いが溢れるが、まあ確かに、納得できそうな気もする。
現に、今目の前で、周りの貴族の男性方などには目もくれず、グルッペン総統に女性は群がっている。
両隣にいる護衛であろう2人の男性も話しかけられており、少し困り顔の赤い瞳の人もいれば、明らかな社交辞令で躱している深緑目の人もいる。
でもやはり、灰色の目の彼に目がいってしまうのは、どうしてだろうか。


『っ…?』

「どうした?A」

『…今は総統と呼べ、周りに人もいるんだから、どう思われるかわからんだろ』

「ああ、失礼しました、総統」


また目を逸らしてしまった。
いやしかし、しかしだ。
どうしてずっとこちらを見ているのだろうか。
偶然目が合ったにしても、どれだけ目を逸らしても目が合う。
自惚れだろうか。
もう一度横目で彼を確認するが、やはり、目が合う。
それが不思議でたまらず、首を傾げていると、女性達の間を割って出て、こちらへと足を進めてくる。


「…貴女が、この国の後継者か」

『…ええ、お初にお目にかかります、グルッペン総統様』

「…嗚呼、会えて光栄だ、A総統殿」

『こちらこそ』


社交辞令も、どうしてか苦ではなかった。
こんなにも一目見て惹かれるものだろうか。
数秒、時間が止まったかのように見つめ続け、彼の護衛の2人が遅れて駆けつけ、苦な社交辞令を済ませたところで、ぴくとには少し席を外すと言った。
そして、彼も護衛の2人に後は任せたと笑って言うと、私の隣を歩いた。


「え、え?A?え?裏切り?え?」

「…まじか、グルさん」

「あいつ、隠す気ゼロやな…後始末大変なん俺らなんに…」


今度はぴくとまでに群がった女性達が口を揃えて、私達の関係を問い詰めていたのには、何だか気づいていたのだが。
それが妙に楽しかった。

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作者名:そういろね | 作成日時:2019年8月9日 12時

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