【d!】恋文は破り捨てて。【gr】 (ページ9)

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『これは、我々への戒めか何かでしょうか』

「…何がでしょう」

『シラを切るつもりならそれはそれで構わないが、今後一切、貴国との外交は行わない、となっても、異論はないな？』

「おっしゃっている意味がわかりません」

細目の外交官は何も語る気はないようだ。
いい加減胃液でも吐き出してしまいたいくらいだ。
鼻をつくのは、明らかに紅茶の匂いに混じる、幼い頃の記憶と共に植え付けられた、悲しき薬の臭い。
こんなにも他人に嫌悪を覚えたことはない。
立ち上がり、ぴくとに一言小声で、帰るぞと伝えれば、ぴくとも同じ考えだったのか、素早く立ち上がり私の後ろをついてきた。

「困ります、総統も悲しまれます」

『…悲しむ？』

「ええ、酷く貴女を気に入られていたので、本来ならば、今日の外交も総統が出席するはずでしたが、とても手が離せない用事でして」

『それで、貴方方が代行を？』

「ええ、ですのでこちらに__」

___パンッ。
伸ばされた手を、容赦なく叩き払った。
これは完全なる侮辱、我が国への侮辱。
睨みつければ、彼らは混乱したような顔で私を見ていた。
その顔は、私が女であるからか。
それとも、思い通りに動かぬ都合の悪い駒であったからか。
どちらにせよ、この怒りは収まりきらない。

『随分と馬鹿にされたものだな、わざわざ出向いたかと思えば、こんなにも贖罪を受ける羽目になるとは』

先程まで座っていた席の前に置かれた紅茶。
鼻を塞いでしまいたいほどに香る、強いあの薬の臭い。
嗚呼、嗚呼、嗚呼！
腹が立つ、こんなもので落とされるような人間と認識されていたことが。

『…睡眠薬が入った茶など、誰が飲むと思うんだ』

温くなったそれを、容赦なく地面に叩きつけた。
それに反応したのか、護衛であった1人が刃を見せて背後を取ろうとしている。
ナイフとナイフがぶつかる音が背後でする。
入り口で確かに待っていたはずのぴくとの姿はなく、おおよそ、背後で私を刺そうとでもしていた護衛の1人を阻止したのだろう。

『残念だが、私もぴくとも、大抵の薬には抗体が出来ている、殺そうとしたのか何だか知らないが、礼儀も知らない幹部の守る国と何も話すことなどない、そちらの総統にもそう伝えろ』

背を向けて扉に手をかけた時。
後ろ手を引かれた。

「ほんますんません…どうか、助けていただけませんか」

焦ったように黙りこくっていた、書記長の彼に。