33日目 ページ33
『…？』
ここに来て、彼の家で居候をさせてもらって早一ヶ月が過ぎようとしている。
彼は、最近パン屋さんでの仕事が多いみたいで、朝から夕方まで出かけることが多くなった。
それでも、土日の休日は必ず家にいるし、特に可笑しいことはないのだが。
彼の、シイナに対するアプローチが何処かぎこちない、というか、嘘くさいとでも言ったらいいのだろうか。
失礼極まりないが、まるで、シイナのことを好きとは思っていない、その上、何処か避けているような印象があるのだ。
『…シイナ？いないの？』
ここに二人も居候させてくれてるのだから、こんなこと考えてはいけないのだろうけど。
そういえば、今日は二人とも出払っているんだった。
彼は仕事で、シイナはお使いに。
ふと、気になっていつもは素通りする部屋のドアノブに手をかけてしまった。
初日、部屋の場所がわからず、この部屋に入ろうとしたが、丁寧に鍵がかけられており、自室だから、できれば入らないでほしいと言われていたが。
まるで、待っていたとでも言わんばかりに、扉は開いた。
中に入ると、殺風景な部屋が広がっていた。
あるのは、大きめのベッドと、２つの枕、本棚に敷き詰められた本。
ヨレヨレの紙袋に入った薬。
机の上に置かれた、キャネルと思われる男性と、仲睦まじく手を繋ぎ笑っている、綺麗な女性。
背景の森は、家の前にあるものだろう。
考えずとも、この二人がどんな関係だったのかはわかる。
『…彼が私に嘘をついてまで隠したいことがあるはず…』
募る不安に抑えられず、部屋の電気をつけ、注意深く周りを見渡す。
すると、地面に不自然な切れ込みがあるのを見つけた。
腰元のナイフを床の隙間に入れ、そのまま上へと持ち上げれば、地下へと続く階段があった。
私は躊躇なく、その階段を下りた。
照明も見当たらず、時々階段で足を滑らせそうになるが、何とか壁伝いに歩いた。
しばらくすると、階段が終わったのか、壁に沿わせていた手に何かが当たった。
感触的に、照明の電源だろう。
他に何かないかともう片方の手を前に伸ばすが、何もない。
仕方なく、その電源をつける。
『…ひっ…！』
急に明るくなった視界に目の前がぼやけるが、それもすぐに直る。
そして、1番最初に目に入ったのは。
ズタズタに切り刻まれた、自分の写真であった。
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ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (
レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません！書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません！走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました！ 本当に好きです！ (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…？感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年4月9日 19時
