32日目 ページ32
その日から、彼女は酷く私に怯えるようになった。
まるで、目の前にあいつらが現れたかのように。
それがやけに胸をムカムカとさせて。
さらに、Aさんは、あのキャネルとか言う男に何処か好印象を持っているようだ。
それが1番気にくわない。
数日前にあったばかりの男を信用し、私のことを拒絶するなんて。
『…ね、シイナ』
「何ですか？」
『キャネルさんのお手伝いに行ってくれない？私、今から洗濯物取り込んでくるから』
話しかけてきたかと思えば、いつもいつもキャネルキャネルって。
やっと彼女と一緒になれたのに。
何を間違えたのか警戒されるし、胡散臭い男に騙されかけている彼女を見なければいけないし。
散々すぎる。
そのイラつきのまま、台所でせっせと動いている。
彼は私に気づくと優しく微笑んだ。
それに微笑み返すほど、私の心に余裕なんてない。
「どうしたの？」
「…Aさんに、手伝って来てって言われたので来ただけです」
「わざわざありがとう、じゃあ、そこの食器しまってくれないかな」
「…わかりました」
こんだけ不機嫌を醸し出しているのに、この人は全く嫌な顔をしない。
結局のところ、彼の頭の中など分かりはしないのだから、正直どう思っているかなんて知らない。
1番厄介なのは、この人があいつらと同じで、彼女以外への興味が皆無であった場合のことだ。
その時は、いざとなれば、殺すという選択肢だってなくはないんだ。
一度きっかり脅させてもらおうか。
「…キャネルさんは、Aさんのこと、どう思ってるんですか？」
「え、どうって…」
「恋愛感情は抱いてますかって聞いてるんです」
「…綺麗な人だとは思うけど、俺には他に好きな人がいるから」
「それはさぞ、綺麗な人なんでしょうね」
「…まあ、好みは人それぞれだから、でも、俺からしたら綺麗な人だよ」
皮肉たっぷりでそう言ったはずなのに、彼は、まるで私なんか眼中にないのか、逆に皮肉を込めてそう返された。
少し驚きはしたが、そうですか、と軽くあしらった後、黙々と手伝いをこなした。
「…１つ、聞いてもいいかな」
「何でしょう」
「…愛してる人の為に誰かを犠牲にしてしまうのは、悪いこと、なんだよね」
一般的に聞けば酷く滑稽で恐ろしい質問なのかもしれないが、この時、私は何故か、彼を諭すどころか、その言葉を肯定してしまった。
「愛に犠牲はつきものなんじゃないですか」
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ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (
レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません！書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません！走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました！ 本当に好きです！ (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…？感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年4月9日 19時
