26日目 ページ26
「…！枢機卿様！」
「嗚呼枢機卿様！枢機卿様の言う通りでございました！」
「日々の幸福に感謝をし続けた私達への、素晴らしい贈り物でございました…！」
「私共の苦労が報われたのですね…ああ、今思い出しても、あの美しさは忘れられませぬ…」
馬車から降りれば、ぞろぞろと笑顔やら泣き顔やらで近寄ってくる、他国の国民。
無理矢理笑顔を作るが、どうも苛つきが収まらない。
できれば、こんな奴らにAの顔など見せたくなかったが。
しかし、あの子が逃げ出してからまだ2日。
この短期間である程度の方角を絞れたのは大きい収穫だ。
神なんざ本気で信じるとは驚きだが、良い駒にはなってくれる。
軽く演説をすれば、彼らは両手を握りしめて、祈りを捧げている。
馬鹿馬鹿しい。
「では皆さん、神のご加護を信じて、これからも良心を信じ続けましょう」
適当な事を言って、馬車の中に戻り、いつもより乱暴に扉を閉めた。
あまりの苛つきに１つ舌打ちを零して、馬車が動き始めたのを境に口を開いた。
「目撃証言があった、Aで間違いない…あー、ほんま苛つく…‼‼」
「そう怒ったて埒あかんやろ、その勢いでA殴ったりしたらほんまお前殺すからな」
「殴ったりするわけないやろ、トントンこそ、いきなり説教始めて泣かせたらその首掻っ切ったるからな」
「はえー、言ってくれるやん」
「お前ら、何処ぞのポメラニアンとチワワじゃないんだ、しっかりしろ」
呆れたようにそう零すグルッペンに、トントンは顔に不満を残したまま書類を手に取った。
それも全部、Aが提出したやつ。
Aの字でも見て何とか精神保っとるんやろうけど、それが1番見苦しいわ。
逃げるんだったら逃げると一言告げて欲しかった。
告げるわけないけど。
でも、そうしたら、抱き潰して動けんようにしたのに。
足りない、Aが絶望的なほどに足りない。
「…酒飲みたい」
「…俺も」
「トン氏、ケーキ食べて良いか？」
「…ご勝手に、どうぞ…」
「俺も食べる」
「酒とケーキって吐くで絶対」
「吐きたい気分やねん」
「何やねんその気分、気持ち悪っ」
思いっきり吐き出してしまいたい。
Aじゃない誰かが作った味のしない飯も。
Aをこの手の内に入れたくて仕方ない俺の気持ちも。
全部、全部。
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ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (
レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません！書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません！走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました！ 本当に好きです！ (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…？感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年4月9日 19時
