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7日目 ページ7

「…」

『嘘つく人は嫌いだよ』

「…だって、Aに何かあってからじゃ遅いやん、心配やねん」

『自分の身くらいは自分で守るから』

「…でも」

『この前の任務の報告書、トントンから訂正指示が出てるから、早く行って』


彼女の冷たい声に、彼は悲しそうな顔をしながら部屋を出て行った。
彼女は、彼の開けたダクトにつながる天井扉を閉めて、もう一度ため息をついた。


「大丈夫ですか…?」

『うん…ごめんね、変な空気にしちゃって、少し疲れてただけだから』

「いえ…最近夜お仕事に出かけること多かったので、仕方ないですよ」

『本当にごめんね、次からは気をつけるから』

「…紅茶、飲みませんか、淹れたばっかなんです」

『ありがとう』


疲れた顔ではあるが、いつもの優しい顔に今は何故だが胸が痛い。
優秀な彼女でも疲れてしまうほどの仕事の量なのだろう。
私も、早く彼女と共に仕事できるようになりたいのだが、まだ入隊したばかり、きっと遠い先の話なのだろう。


「仲、悪いんですか、ゾム隊長とは」

『…悪いわけじゃないけど…大丈夫、心配しないで、本当に少し疲れてるだけだから』

「そう、ですか」


嘘なのはわかっているが、踏み込み過ぎて、拗らせてしまうのは何よりも嫌だ。
彼女とは、ゆっくり、今以上の関係に、親愛を深めていきたいのだから。
ゾムさんは、あの様子だとかなりAさんを好いているようだ。
相思相愛ではないようだけれど。


「あの、Aさんは結婚してませんよね」

『そうだね、したいとも思わないから…』

「心に決めた人がいるから、とか」

『…何言ってるの、私にそんな人がいたら、こんなところで休日潰してまで仕事してないよ』


また嘘をついた。
なんでこんなにも顔に出やすいのだろうか。
嘘をつくことへの嫌悪故か、それともただ単に下手なだけか。
そんなところもまた愛らしいのだが、これは困った。
私のつけいる隙間を誰かに埋められては意味がないのだから。
深く追求すれば、きっと怪しまれる。
この気持ちは、バレてしまうまでは心の奥深くに、大切に、丁重にしまっておくのだ。


「私、急用を思い出したので、失礼しますね」


そして、バレてしまうよりも前に。
邪魔者は消してしまおう。

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ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません!書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです!他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません!走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです!他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました! 本当に好きです! (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…?感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そういろね | 作成日時:2019年4月9日 19時

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