30日目 ページ30
「ん…っ…」
その微かな声が聞こえて、台所で話していた彼の元を離れて、リビングへと駆け足で向かった。
すると、眠い目を擦りながら、起きた時にずれてしまったのか、先程かけてあげたタオルケットを畳んでいた。
『シイナ』
彼女の名前を呼べば、開ききっていない目でこちらを見た。
笑顔で起きた？と言えば、目を見開いて、折角畳んだタオルケットも地面に投げ捨てて、抱きついてきた。
その勢いに押されて、数は後ろに下がるが、彼女の鼻水をすする音が聞こえて、驚きの前に笑ってしまった。
「…もう、起きても大丈夫、なんですか」
『うん、ごめんね、心配かけちゃって』
「…本当ですか？」
『え…？』
「少し、元気ないように見えますけど…まだ疲れ取れてないんじゃないですか？」
『…ううん、大丈夫だから、本当に』
この子は、人の変化を見つけるのが本当に得意なようだ。
それが、どうか他人でも同じようにと願う。
深い眠りの中に落ちていた気がするが、看病してくれた、この家の主である、キャネルの驚いた顔を見れば、本来こんなにも早く目が覚めることは無かったのだとわかった。
…刻一刻と、自分の身体でさえも制御の効かないように変わってしまっている。
だから、あんな夢にさえ、こんなにも怯えてしまっている。
『…お願い』
「…？」
『…お願いだから、貴女だけは、そのままでいて』
「Aさんが望むなら」
『…』
この子の目が、時々、彼らのことを連想させる。
酷く似ているのだ、彼らが最初から最後まで向けていたあの目に。
とても澄んでいて、私が何度も、自分でも可笑しいと心配になるくらいに、寄り添いたかった頃の彼らのあの目に。
彼らのことを言えないくらいに、私だって、彼らのことを愛していたのだ。
心の底から、死なら諸共、そこに悔いなどない、と。
「お取り込み中失礼」
『あ、ごめんなさい…』
「ううん、全然、シイナはお腹空いてる？」
「…少し」
「よし、じゃあご飯にしよう、随分長旅だったみたいだし、腹ごしらえはしっかりしないとね」
私の中で、彼はとても好印象だ。
何せ、私なんかよりも、強い彼女を好きだと笑っていたのだから。
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ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (
レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません！書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません！走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました！ 本当に好きです！ (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…？感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年4月9日 19時
