Shape of Love(紫) ページ6
紫side
クローゼットの中から、
お気に入りのピーコートを取り出した途端、
もうここには居らん君の匂いがした。
俺の持ってる優しさも愛も
全部あげたのに、
なんで君はここにおらんのやろう。
いや、あげたと思い込んどっただけかもしれん。
君にとっては、優しさじゃなかったんかもしれん。
もしかして、俺の独りよがりやった？
君は嫌やった？
それすらももう、聞けへん。
別れ際、君が放ったあの言葉が、
ずっとこびりついて離れんくて。
「崇裕は、うちのこと愛してるって言うけど、それは愛じゃないと思う」
なんで、愛じゃないと思ったん？
あれ、愛ってなんやっけ、
恋ってなんやっけ、
好きって、なんやっけ。
急に放たれた一言に頭が回らなかった。
「…ほら、何も言えんのやろ、」
ちゃうねん。
アホやから、頭回ってへんだけやねん。
言葉の代わりに涙が溢れた。
そのまま、君とは別れることになったんやった。
何も言えんかったんや、俺は。
愛の正解なんかあるん？
誰もが頷くような、愛のかたちってあるん？
あの日からずっと、考えてるよ。
今日着る服を選んでから、
ホットコーヒーに口をつける。
この苦味がええんよなぁ。
コーヒーが好きになったのも、
君のせいやのになぁ。
君が、
「朝から新鮮なコーヒーが飲みたい！」
っていったから、
豆から全部揃えたんやんか。
1人でコーヒー作るの寂しいんやで。
コーヒーの暖かさでさえ、
苦い思い出になってもうた。
…そうしたのは、俺なんかな。
どんな形でもええから、
君と繋がってたかったのに。
どんなに想っても、もう帰ってこん。
ちゃんと、愛が分かったら、
君に会いに行こうって決めたけど、
正解なんかまだ見つからんし。
迷って迷って、まだ分からんし。
愛のかたちなんてやっぱりないんかもしれん。
それでも、
ちゃんと君が言ってた愛を見つけられたら、
今度こそ抱きしめて、返事できるかな。
そしたら、
「A、愛してる」
って、ちゃんと伝えるんや。
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作者名：ひよこまめ | 作成日時：2021年1月14日 13時
