僕らのはんぶん。 (ページ39)

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名もなき感情(赤) ページ39

あなたside

出会った時から、そうだった。
アイツの笑顔を見ると、
ぎゅーってなって、

ツラそうな顔を見ると、
ずきってなる。

手が触れたら、
ビビってなって、

女の子と楽しそうにしてるのを見ると、
グーってなる。

この感情は何なのか、
全然わからんかったから、
調べてみたら。

「うち、重岡のこと
愛してるみたいやわ」

この結論にたどり着いた。

ガタンッッッ！！

「は……、はぁ？！？！

おまっ、急に何言うてん！
意味わからんて！！
冗談でも、そんなん言うな！」

今日は2人で日直で、
放課後、机で日誌を書いていた重岡は
イスから転げ落ちた。

そんなに、顔真っ赤にして
怒らんでも……。

そんなこと言われても、
調べただけの知識やから、
うちやって愛の意味なんか分からんて。

「そんな拒否らんでもええやん…」

その後も、
心臓に悪いだの、
他のやつに言うなよだの、
ぶつぶつ言いながら日誌を書く重岡。

恋愛経験がない私は
さっぱり分からない。

愛じゃないならなんなん？

もっかいケータイで調べてみる。

『もしかして:恋』

…恋？

「なぁ」

「今度はなんや」

「じゃあ、
重岡に恋してるって言ったら？」

炭酸を飲んでた重岡が
盛大に吹き出した。

「ブフッ！ゲホっ！」

「ちょ、汚い…」

「いや、誰のせいやとおもてんねん！」

「えぇ、うち…？」

なんで、うちのせいなん…

「恋って…、
そんなん気のせいやから！！

もうこの話終わり！
はよ終わらすで、もう…」

気のせい？

そんなん言われたら、
この気持ちがなんなんか、
自信なくなってしまうやん。

パパッと終わらせて、
「俺が出しとくから」と言って、
重岡はそそくさと帰ってしまった。

こんな風にギクシャクするんなら、
言わんかったら良かったなぁ。

少し沈んだ気分で帰路についた。