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チャリ、と耳元で慣れぬ音が跳ねた。幹に押し付けられていた体から細い腕が離れる。
(どういう、状況、だっけ)
ぼんやりとした頭がか細い記憶を辿る。
昨夜、何があっただろうか。今朝、何をしていただろうか。
けれども思い出したように渦巻いたのは、つい、２秒前の低い声だった。
「ふっかに何をした」
ふっか。ふっか、ふっか、ざわ。
おそらく深澤の愛称なのだろうと、すぐに察しがついた。
こちらの文化とは違い、彼の世界では名字も名前と同じように愛称にして親しみを示すことがあると、聞かされていた。
だから、めめと、だてさまと、呼ぶのだと、教えられていた。
チャリ、と耳が揺れる。ああ、とここで漸く眼前の男に焦点があった。
実に利発そうな男であった。紙切れの中で顔が見えていた、彼だろう。
見てくれよりも随分と声が低く、割に見てくれよりも遥かに温和な気質が見え隠れしている。
無意識に耳元を撫ぜたその動きに激昂する彼も、そんな彼を慌てて止める二人も、あまりにも深澤と同じ性質が
窺えてしまったから、余計に愕然としてしまったのだ。
(──ああ、本当に)
本当に、来てしまっていた。
これほどの歓喜も絶望もあるだろうか。
深澤があれだけ焦がれていた仲間がここに居る。けれども、ならば、今度は、帰る術は何処にあるという？
ああ、でも、それでも、深澤を彼らのもとに、
──ピュイイイ！
ルイの叫びが耳に届いた。
途端、弾けるように拓けた脳が揺れた。
声がいつもと違う。違うのだ。聞いたことのない声だった。
方角はきっかり屋敷のある方だ。ルイが単身屋敷から離れ何かが起きたわけではないらしい。
(……いや、違う)
屋敷から離れていないのに、事が起きている。
聖獣のルイが居るにも関わらず屋敷が襲われている。
それもルイが一人では対応しきらない程の何かが起きている。
それが何かなんて、分からないほど馬鹿でも間抜けでもない。
「タツヤ……」
浮かんだのは深澤のこと。
ルイだけでも耐えられない様子だった彼は大丈夫なのだろうか。
「っ」
「ちょっと！」
あの低い声が聞こえる。けれども構っている暇などなかった。
折角見つけたのだ。折角、会えたのだ。
なのに会えずに終わるだなんて、そんなの。
(許してたまるか──！)
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如月千羽(プロフ) - みやさん» コメントありがとうございます。お待たせしてしまいましたが、更新は続けるつもりなので宜しくお願いします (8月25日 21時) (
レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 続きお待ちしてました…！この作品好きなので何度も読み返してます^^ (8月24日 19時) (レス) @page9 id: cdc5c5cb1f (このIDを非表示/違反報告)
如月千羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします！ (7月20日 8時) (レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！！ (7月20日 0時) (レス) id: a6caf0043b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年7月19日 22時
