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バキン、と氷が砕ける音が響いた。
次いで、ぶちぶちと植物の千切られる音が続く。
修復などさせる気もない、しようもないほどに壊れる魔法に向井と目黒の瞳が震えた。
それでも諦めるかと手をかざそうとした、目黒のその長身がポンっと跳ね飛んだ。
(アニメだ)
場違いに浮かんだ言葉に深澤の脳が叫んだ。
いくらCGを用いようとも実際の人が演じている特撮よりも、よほど、アニメのような、そんな吹き飛び方だった。
「――めめ！」
目黒に続こうとしていのだろう向井の意識が深澤の悲鳴に逸れた。
それを見逃すこともなく目黒を吹き飛ばしたベイオウーフの腕が、煩わしい蚊を払うように向井の体も襲う。
一度、二度、と跳ねた体は狂ったように頭を揺らす魔物の群れの前に落ち、鈍く動く。
目黒を動くに動けないようで呻き声をあげながら、身をよじらせもがいている。
「思い上ガンじゃネえ」
抑える者がいなくなり自由の身となったベイオウーフの手がセシルの顔を掴む。
太ましい指が、魔物になりはてた指先が無遠慮に右目をこじ開けた。
痛みと恐怖にあえぐセシルの唇は何を思い出しているのか、しきりに嫌々と泣いている。
「宝石眼シか価値のネエてめえガ、何ヲ思い上がル」
「い、やだ」
「そレスら失くシたテメエに、何ノ価値がアる」
「いや……」
「モう、テメエが持ってテも、しょうがねえ、ダロ」
「や、」
ぶちり、と千切れる音がした。セシルの目頭から、目尻から、血が流れて、悲鳴がつんざく。
岩本と阿部は深澤を守ることで精いっぱいだ。
宮舘とラウールが目黒に、佐久間と渡辺が向井に駆け寄っているのが視界の端に見えるが、間に合わないだろう。
セシルを助けられる者は、いない。
「だれか……」
助けて、と視線を動かしても誰も居ない。
白くなっていく脳内にすら怖くなり、呼吸が跳ねる。
「――ねえ」
不意に声が聞こえた。
星空のような声が、確かに聞こえた。
舌足らずな音に視線が引き寄せられる。
そこには不自然なほどに落ち着いたウサギがいた。
宝石のような瞳を真っすぐに向けるウサギが、問うた。
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如月千羽(プロフ) - みやさん» コメントありがとうございます。お待たせしてしまいましたが、更新は続けるつもりなので宜しくお願いします (8月25日 21時) (
レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 続きお待ちしてました…！この作品好きなので何度も読み返してます^^ (8月24日 19時) (レス) @page9 id: cdc5c5cb1f (このIDを非表示/違反報告)
如月千羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします！ (7月20日 8時) (レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！！ (7月20日 0時) (レス) id: a6caf0043b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年7月19日 22時
