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ぐい、と顔を引き寄せられ激痛が走った。
身体は自然とつんのめって、けれども辛うじてついた両手によって四つん這いのようになっていた。
音はもう、聞こえない。
「こ、きゅ……し……死ぬ、気か……」
知っている定型文だった。
耳に触れた指先が場違いに暖かく、幼い。
「いつ、も……ひとの、こと、ば……か」
血の気も引いていっそう不健康さが際立った肌の中で、紫と青が輝いている。
小さくあげられた口角は見慣れた微笑みになろうとしている。
「しょ……が、ない……やつ」
かすれた声には呆れと心配が乗って。
あまりにも馴染んだやり取りに知らず詰まっていた呼吸があふれ出る。
涙も一緒になって流れださないだけ、よっぽどマシだった。
深澤の耳を覆う彼の手が何をしているのかなんで、知っている。
彼はいつだって、魔法を用いて、ひっそりと深澤を守ってくれているのだって、知っていた。
「“人のことばっか”なのはセシルだってそうじゃん……」
「……そ、かも」
「も、ほんと……しょうがねえやつ……」
ふ、と彼の乾いた唇から笑い声がこぼれた。己の唇も自然と上がる。
「――ンでだよ!!」
先ほどまで耳鳴りによって遮られていたベイオウーフの声が届く。
蔦と氷に覆われ人間らしさの欠片も消えそうなほどに醜悪になりはてた大男が、それらを引きちぎらんと暴れながらしきりに叫び続けていた。
「ナんでコウナるンダよ！ どいツモコいつモ俺ヲ馬鹿にしやがッて！」
ぐわんぐわんと頭が不規則に揺れている。
その体格に保証されたかのような重量が拘束を襲い、ミシミシと音を立てて破片を落としていく。
その度に向井と目黒の手に力が入り修復されるが終わりがないように思える。
顔まで覆われている拘束の隙間からぎらついた紫とおぞましいほどの虹色が揺れている。
ミチャミチャと不気味な音を立て、倒れていたはずの――額に
その眼は虚ろに、虹色を眼球に閉じ込めた魔物たちはそれまでに溜まっていたのだろう、口内の液体という液体をだらだらと垂らしながら一行を見据える。
「操ってる……!?」
「はあッ!? 何でもアリかよコイツ！」
体制を整えていた渡辺が悲鳴にも似た声をあげる。
「何ッで動けてんねんホンマに！」
二人の額に脂汗が滲む。ただ立って手をかざしているだけなのに呼気が荒くなる。
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如月千羽(プロフ) - みやさん» コメントありがとうございます。お待たせしてしまいましたが、更新は続けるつもりなので宜しくお願いします (8月25日 21時) (
レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 続きお待ちしてました…！この作品好きなので何度も読み返してます^^ (8月24日 19時) (レス) @page9 id: cdc5c5cb1f (このIDを非表示/違反報告)
如月千羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします！ (7月20日 8時) (レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！！ (7月20日 0時) (レス) id: a6caf0043b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年7月19日 22時
