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背後の鍔迫り合いの音がじり、と下がるのを感じる。
宮舘とラウールと渡辺――いの一番に飛び出していた三人に更にルイまで加わり、対して相手はたった一人の大男だというのに、それでも明らかに彼らの方が無勢の様だった。
「ッ……康二！」
「分かっとる！」
目黒と向井が手をかざす。
ベイオウーフの足元から植物の蔦が伸び、それを覆うように氷が重なる。
更にその氷を固めるように植物が絡みついては凍り付く。
そうして何重にも生まれた拘束具はベイオウーフの動きを止めること自体には成功したようだった。
「舘たち
向井が叫ぶ。その声に合わせ一斉に飛びのいた三人の足元もまた、氷によって固められた。
それでもいつまでも持つものではないのだろう。
二人の顔に浮かぶ焦りが深澤にそれを知らせる。
突如として攻撃を阻害され、尚且つ拘束までされてしまったベイオウーフが吠えた。
人間である面影の一切を失くしたような咆哮はまっすぐに深澤の脳に突き刺さり、ぐう、と喉を潰すようなうめき声が転げ出た。
覚束ないながらに発揮していたはずの魔導が拍子にかき消え、薄くくっつき始めていた皮膚が血液に押し出されるように二度と裂け始める。
「だめっ」
「ふっか！」
慌ててかざそうとした手が震え、上手く空に固定できない。
うわああん――。
知っている耳鳴りだけが、脳を満たし始めていく。
わあん、わああーーーーん。
次第に割れるような耳鳴りすらも遠くなっていく。
頭痛も白みだしていく脳によって薄まっていき、ちかちかと明滅する中では己が座っているのか横たわっているのかも怪しい。
ぐわん、と視界が回る。けれど体は鉛のように重たい。頭部だけをサッカーボールのネットに詰めて振り回されたようだ。
「――！」
わああああああん。
誰かが肩に触れている。分からない。
けれど、直前の記憶を頼るなら。阿部か。岩本か。佐久間か。
わあん、わああん。――ああん。わ――あああ。
そうだ。自分が倒れるわけにはいかない。
逃げないと、いけないのだから。向井も、目黒も、そう長くはもたないだろうから。
だから、そのために、セシルを、助けなければ。
わああああん、わあああ。
そう思うのに咆哮だけが脳を埋め尽くして、すべてが、遠く、遠く。
わあああああん。わああん、わあーーあああん。
遠く、って。
わあああああああ、
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如月千羽(プロフ) - みやさん» コメントありがとうございます。お待たせしてしまいましたが、更新は続けるつもりなので宜しくお願いします (8月25日 21時) (
レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 続きお待ちしてました…！この作品好きなので何度も読み返してます^^ (8月24日 19時) (レス) @page9 id: cdc5c5cb1f (このIDを非表示/違反報告)
如月千羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします！ (7月20日 8時) (レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！！ (7月20日 0時) (レス) id: a6caf0043b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年7月19日 22時
