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場違いに優しい声だった。
色黒い手が頬を這う。するりと優しい力で上げられた視界の先、８人の笑みが見える。
８人が、確かに笑っていた。
「どうせ何を言ったって聞かないんでしょ、ふっかは」
「元々助けてくれって頼まれてたんだ、
同時にできんならそれが早えだろ」
「それに今までふっかを守ってくれてたんなら、
ちゃんとお礼を言わないとね」
「てーか照がデコ割っちゃってんだよねぇ。謝んなきゃ」
阿部の手が深澤の頬を慰めるように撫でる。
渡辺の手が奮い立たせるように肩を雑に叩く。
宮舘の手が寄り添うように反対の肩に乗せられる。
佐久間の手が励ますように背中に触れる。
「だいじょーぶよ、ふかさん！ 安心しときって！」
「今度は俺達も居ます。九人全員、ここに居ますから」
「降りかかる火の粉ぐらいはさ、ほら。多分、払えるしさ！」
年少の三人の手が決意を示すように繋がれる。
震える深澤の前、岩本が屈み込んだ。
力に自信のある宮舘が軽々と深澤の体を持ち上げる。
丁重に降ろされた岩本の背中は硬い。固くて、広かった。
「い、いの……？」
「良いも何も」
ぽろりとこぼれ落ちた声に岩本が笑う。
振り向いたその顔はいつだって思い出していた通りの、目が消えくしゃくしゃになったそれだった。
「駄目って言ったって暴れたくせに、今更」
冷やかすような笑い声は柔らかい。
それにすらじわりと目の奥を叩かれ、深澤は溢れそうになる涙を隠すように背に顔を埋めた。
笑い声が重なる。安定するようにと背負い直すように体が揺れる。
「行こう」
岩本の号令が入った。また大きく体が揺れた。
足が確かに屋敷へと踏み出された、はずだった。
──パァン、と。
破裂音が一度。花火のように遠く弾ける。
全員の体が固まった。深澤の心臓がひとつ、ひやりと跳ねた。
「銃声だ」
阿部の強張った声が聞こえた。
それに被さるように、世界が揺れた。
──ピギャアアアァァァァアアァァ……。
断末のような鳥の叫びが森中を駆け巡る。
その強烈な声に皆が耳を抑え、岩本も頭を振る。
今までと比にならない痛みに襲われる深澤は耳を抑え、岩本の背にこれでもかと額を押し付けながらうわ言のように呟いた。
「セシル……？」
それを岩本が拾ったかは定かではない。
けれど、止まない断末魔の中に声が聞こえた。
「行くぞ！」
弾かれるように８人は走り出す。
銃声はそれきり聞こえない。鳥の声だけが、異様に響き渡っていた。
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如月千羽(プロフ) - みやさん» コメントありがとうございます。お待たせしてしまいましたが、更新は続けるつもりなので宜しくお願いします (8月25日 21時) (
レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 続きお待ちしてました…！この作品好きなので何度も読み返してます^^ (8月24日 19時) (レス) @page9 id: cdc5c5cb1f (このIDを非表示/違反報告)
如月千羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします！ (7月20日 8時) (レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！！ (7月20日 0時) (レス) id: a6caf0043b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年7月19日 22時
