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ガツ、と足が取られた。
太い根っこに足が引っかかったらしい。踏み出せるものと考えていた足は半端に絡まり、獣すらも通らなくなった道に体が投げ出される。
怪我をしてしまう。そう覚悟を決め目を瞑った体は鋭い木に触れる直前、誰かに抱きとめられた。
「ふっかさん！」
「め、め」
いつの間に現れたのだろうか。しっかと腰に回された手が深澤の体が倒れないようにと固定している。
目黒の後ろからバタバタと他のメンバー駆け寄ってくるのが見えた。
岩本も阿部も、居なかったはずの佐久間や渡辺に宮舘、向井やラウールまでもが眉を下げた表情でこちらを見ている。
「間に合ってよかった……怪我はありませんか？」
「な、んで」
皆がここに居る？ そう問いかけた喉が震える。
すっかり悲鳴を上げてまともに動かなくなった体がヘナヘナと崩れ落ちる。
それでもなお立ち上がろうと踏ん張る深澤に向井がそろりと手をのばす。
「ふかさん、俺らが行くから、」
「それじゃ意味がない！」
弾き飛ばすような声に向井の手が硬直した。
ぼたりと水滴が落ちる。涙か、汗か、熱くなった吐息の間からぼたぼたと何滴も落下していく。
「俺が行かないと意味がないんだよ！」
「でも、そんな体じゃ」
向井の心配は分かっている。
それでも引き下がれないと眉間に力を寄せ顔を上げる。
８人がそれぞれに浮かべる苦しそうな顔を見据え、何度も呼吸を挟みながら繰り返した。
「『大丈夫』って言ったんだ、俺が。
『諦めなくて大丈夫』って……『俺がいるから大丈夫』って
そう、俺が言ったんだから！」
グッと噛んだ唇はかさつき、歯に刺さる。
「だから俺が諦めちゃ駄目だ。
セシルはセシルを諦めてるから、ずっとそうしてきたから、
なのにセシル以外の誰かが、俺が、諦めちゃ駄目なんだよ」
思い浮かぶのはいつだってあの顔だ。
呆れたような顔ばかりして、表情の隅で泣いているくせに。
無愛想な表情と裏腹にそういう時ばかり瞳を揺らすから。口元を強張らせるから。
その中に、その端に、セシルを見たような気がしたのだ。
他でもなく、使用人でもなく、世話役でもなく、ただありのままのセシルがひっそりと詰められていると思ってしまったのだ。
また下を向き、腕に力を込める。
馬鹿になった手足は全くと力めず、ただ露に濡れるばかり。
それでも立ち上がろうともがいていた、時だった。
「ったく……しょうがないなあ」
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如月千羽(プロフ) - みやさん» コメントありがとうございます。お待たせしてしまいましたが、更新は続けるつもりなので宜しくお願いします (8月25日 21時) (
レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 続きお待ちしてました…！この作品好きなので何度も読み返してます^^ (8月24日 19時) (レス) @page9 id: cdc5c5cb1f (このIDを非表示/違反報告)
如月千羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします！ (7月20日 8時) (レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！！ (7月20日 0時) (レス) id: a6caf0043b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年7月19日 22時
