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魔物の襲撃だなんて、そんな生温いものではない。
それでも、逃さなければ、と思ったのだ。
だって彼らは着いてきていた。深澤を取り戻さんと、得体のしれないセシルにそれでも着いてきたのだ。
だからセシルが与えられる見返りは深澤を生きたまま返すことだけだと、ただそれだけに突き動かされる。
強張った深澤の顔が遠のいて、確かに屈強な男が抱きとめたのを見届ける。
深澤は混乱しているようだった。深澤を抱きとめた彼らは困惑しているようだった。
「走れ！」
屈強な男と目が合う。
垂れた細い目が見開かれ、突き飛ばされるように体をひるがえさせる。
何かを叫ぶ深澤の声が風にかき消され、視界が紫の羽根に覆われた。
ピュイイイ──！
ルイだ。ルイが叫んでいる。
今もセシルの奥底にあった恐怖や怒りに支配されているのだろうに、それでも我を忘れることなくセシルを庇うように地上に降ろしてくれた。
「ルイ」
すり寄ってくれる鳥の名を呼ぶ。
顔を埋めそうになっている羽を宥めるように撫ぜ、辺りを見渡す。
「ごめん、ルイ」
自分たちが先程まで居た場所は見る影もなくひしゃげていた。
魔物が攻撃を加えたのかなんて、確認するまでもなかった。
よくまあこんなにも集まってたかが家を一軒潰そうとしている、と笑いたくなる。
実際、もう既に魔物という魔物がセシルとルイを囲んでいる。
積年の恨みが籠もった気配がグルグルと唸っている。
「今からお前をないがしろにする」
自分で放った言葉に、どうしてだか腹の奥と胃の中がひやりと冷えたような気がした。
それでも怖くないのだ。不思議と、今の方がよっぽど恐ろしくない。
しょうがないと口からついて出た言葉に、深澤の瞳が見開かれたそちらの方が多少の心残りではあるけれど。
(──こればっかりは俺のせいだから、しょうがないんだ)
ああ、でも。
(そういえば名前、呼んでくれなかったか)
笑えてしまう。しょうがないかと肩の力を抜いた。
それだってまあ、慣れてしまえば自分らしいではないか。
周りに気圧されて流されて。悪い方へと転がり落ちるような自分にお似合いの、惨めったらしい最期で。
眼前に迫りくる獣の腕に、ただ静かに瞳を閉じた。
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如月千羽(プロフ) - みやさん» コメントありがとうございます。お待たせしてしまいましたが、更新は続けるつもりなので宜しくお願いします (8月25日 21時) (
レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 続きお待ちしてました…！この作品好きなので何度も読み返してます^^ (8月24日 19時) (レス) @page9 id: cdc5c5cb1f (このIDを非表示/違反報告)
如月千羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします！ (7月20日 8時) (レス) id: 94f81c196d (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！！ (7月20日 0時) (レス) id: a6caf0043b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年7月19日 22時
