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セシルからは時おり鼻に突き刺さるようなにおいがする。
ひしゃげるというほどでもないが、それでも薄く意識を欠くような臭いは肉の腐りはてたそれに近い。
「悪い。そんなに臭うか」
「えっ。……あ、ごめん。顔に出てた？」
「いや」
ゆるりと頭を振った彼の手には解かれた包帯がたるんでいる。
あくまでも固定するためであって止血の予定もなかったそれは汚れもなく、パッと見ただけではよれているだけでまだ真新しいように見えた。
これを洗浄して、また明日か夜にでも固定用として再利用するらしい。
「不愉快な臭いをたたせているのは俺なんだろ。
消したつもりだったが、鼻が馬鹿になって程度がわからなかった」
「そ、んなに酷いもんじゃないけど」
それは事実だった。
あくまでも臭うのは時おりであるし、その
それを思えば一昔前のテレビ局の方がよっぽど悲惨なにおいをしていた。
ただ、深澤がいつも気にしてしまうのは、そんなにおいを彼がまとう原因が読めないからだ。
栄養の回っていない容姿の割に、服装はいたって身綺麗だ。
仕えているという割には気安く横柄で、仕えているという割には思慮深さは上に立つ者のそれに近い。
気遣い方のそれだって、深澤が想像しているどれよりも遠い。
選ぶ言葉を考えて、適切な言葉を見つけることができない。
互いにそれが見て取れる空気が間に流れる。
耐えかねたのかセシルはあらわになった深澤の肩に手をかざし、もごもごと何かを唱え始めた。
「《プラーガ・サナーレ》」
途端、セシルの指先に光が集まり深澤の肩に降り注ぐ。
じゅわじゅわとサイダーが弾けるような感触に思わずくすくすと笑い声があがってしまう。
肩に向けられていた青い瞳がじろりと見上げてきた。睨んでいる。
「動くな」
「だってくすぐったいって」
遂に耐え切れず笑い声が大きくなっていく深澤に呆れているようだった。
それでも指先はピンと意識を張っているままで動く気配がない。それが彼の優秀さを物語っていた。
「いいなあ、俺も魔法使ってみたい」
「魔法じゃない」
「ああ、そうだったわ。魔導、使ってみたい」
「寝込むぞ」
「だよねえ」
どうやらこの世界には魔導と呼ばれるものがありふれている、のだという。
けれど深澤はそんな魔力との相性がすこぶる悪いのか、ここしばらくは何かと寝込んでいた。
想像よりもはるかに遅々として進まない治療もそのせいだ。
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春原明香(プロフ) - 沙耶さん» コメントありがとうございます。オリジナルキャラクターも多い作品とはなりますが、最後まで楽しんでいただけると幸いです。 (5月20日 22時) (
レス) id: cf1a8a04fc (このIDを非表示/違反報告)
沙耶 - 続き待ってます！ (5月20日 17時) (レス) id: 6a6eda54e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年5月5日 20時
