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あの女将の発言は社交辞令でも冗談でもなかったらしい。
気が付けば手を綺麗に洗浄され、名前を確認されたかと思えば流れるように宮舘はキッチンスペースへと連れ去られていた。
その後ろに向井もひょこひょことついて行ってしまったため、取り残されたのは三人と目黒。そして我関せずといった態度で椅子に座ったアルトとテディだった。
「……え？」
「ああなったらアーシャさんは折れないから、諦めて手伝った方が良いよ。
康二とアーシャさんに言われた場所に料理を運んで、机を掃除するだけだから」
唯一状況を理解しているはずの目黒にそう言われてしまっては、従わざるを得ないのが三人の立場だった。
目黒に渡されるまま布巾を持つ。カウンターの向こうでは既に宮舘がフライパンを手にしていた。
「だってだって！ 凄い凄い！」
向井のはしゃぐ声が聞こえてきた。
完全に元通り、というほどでもないが少し幼さが増した声色に宮舘もくすくすと笑っている。
阿部は目黒と共に外に出ることにした。向井が片付けようとしたテーブルを掃除するためだ。
木製の皿を重ね、硬く絞られた布巾で簡単に机上を拭う。
落ちている野菜の破片などを近くに立てかけた箒ではらっていく。
「流石。手慣れてんね」
「これでもずっと手伝ってるからね」
はい、と阿部に布巾を持たせ目黒は積まれた皿を器用に持ち上げる。
揺らぐ様子もなく宙に上がった木皿に思わず、おお、と小さな歓声を上げると目黒の喉がくつりと揺れる。
「え、なに？」
「いや、俺たち阿部ちゃんとラウールを一番心配してたんだよね。
でもちょっとは元気になったみたいで、良かった」
「あっ……そう」
目黒の言葉に瞬く。
なんだか照れ臭くなってしまった阿部は素っ気なく返事をすると、今度ははっきりと声を出して笑われてしまった。
くそう、と恨み節を吐きそうになる阿部の体がぐらりと揺れた。何かが足に絡まったのだ。
慌ててたたらを踏み、足元を見やる。見覚えのある紫の毛玉が猫のように阿部の足をすり抜けてはぐるぐると円を描いていた。
「え、うわっ、え、何!?」
「きゅう！ きゅうぅ！」
「あ、アリスおかえり」
器用に角を避けて頭をこすりつけるウサギ。そして暢気に声をかける目黒。
ぴょこぴょこ跳ねるアリスと呼ばれたウサギの走ってきたのであろう方角では、佐久間と岩本が目を白黒とさせていた。
「……どういう状況!?」
同じようなセリフをよく聞くようになったと思う。
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春原明香(プロフ) - 沙耶さん» コメントありがとうございます。オリジナルキャラクターも多い作品とはなりますが、最後まで楽しんでいただけると幸いです。 (5月20日 22時) (
レス) id: cf1a8a04fc (このIDを非表示/違反報告)
沙耶 - 続き待ってます！ (5月20日 17時) (レス) id: 6a6eda54e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年5月5日 20時
