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荒々しい操縦でもって着陸した鳥を死んだような瞳で眺める。
ダスダスと地面を叩き付ける足音と共に迫ってくる巨体へ、セシルはがっくりと頭を垂れて形だけの礼をしてみせた。
「チッ」
鳥の背から降り立った大男がセシルを見るなり舌打ちを寄越してきた。
身長は優に２mを超えており、それに見合うだけの太い腕と足は寸足らずの裾をはち切らんとしている。
太い指や首、胸元といった至る所にジャラジャラと大振りの宝石たち。それらはぶつかり合っては小さな悲鳴のような不愉快な音を立てていた。
実に馬鹿々々しいほどに成金染みた風体の男は、実に馬鹿々々しくもあの宝石のような煌めきと魅力を持った鳥を見せびらかすためにせっせとあちらこちらと飛び回っているのだ。
「アレはまだ動けねえのか、ええ？」
アレ、と屋敷でひとつだけ締め切られた窓を指で示される。
その部屋は深澤のいる場所だ。
「室内を動き回る程度は可能です。……ですが、やはり外に出せるほどでは、」
言い切るよりも早く眼に激痛が走り言葉を飲み込む。
「まだなのか！ もうアレがここに来てどれだけ待ったと思ってんだァ!!」
「申し訳ございません。ですがアレ自体あまりにも魔力に対する耐性がないもので」
ズキズキと痛む右目を抑えながら冷静に答える。
それでも納得がいかないのだろうか。大男の巨大な足は荒々しい音を立てながら、まっすぐに深澤の部屋を目指していた。
深澤は本人の自虐に反して容姿が良い。
彼は自分の世界では歌を歌い踊り人々の前でパフォーマンスをする仕事をしていたと語っていたが成程、確かにそれに見合うだけの美しさが彼にはあった。
元々の造形の美しさもある上に、努力して得たのであろう垢の抜けた美しさもある。だが、それだけではなかった。
人に見られることを前提とした動きだ。
それは王侯貴族にあるような威厳を示すためのものではなく、人々を魅了するためのもの。
それでいて下町で時おり見受けられるようなそれの下品さはなく、言ってしまえば不思議な清純さを孕んでいた。
何よりも、ひとつ。セシルと大男だけが知っている深澤の秘密があった。
――あの男は、その秘密に魅入られている。
故に、文字通り、早く己が手元で飾りたいと思っていることも、セシルは知っていた。
(誰がさせるか)
心中で舌打ちを返す。
セシルはただの一度も、この男を好いたことなど有りはしなかった。
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春原明香(プロフ) - 沙耶さん» コメントありがとうございます。オリジナルキャラクターも多い作品とはなりますが、最後まで楽しんでいただけると幸いです。 (5月20日 22時) (
レス) id: cf1a8a04fc (このIDを非表示/違反報告)
沙耶 - 続き待ってます！ (5月20日 17時) (レス) id: 6a6eda54e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年5月5日 20時
