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やりたくないと文句を垂れようがやらなければならない事に変わりはないわけで。
元々渡辺が最後を所望していたのもあり、ラウールが挑むことと相成った。
「い……行きます！」
えいっと小さな掛け声とともにラウールの手が水の中に潜った。
今度の反応はゆっくりだった。じわじわと彼の手から白色が滲みだし、水鏡の中を満たしていく。
あまりにも変化が遅いからか不安げにラウールが覗き込む。その間も、淡い白濁は徐々に濃度を増していた。
そして遂に指の先も確認できない程の白に満たされた――時だった。
「あぶっ」
ラウールの悲鳴すらもかき消す勢いで水柱が飛び出した。
その勢いはくじらの潮吹きか間欠泉もかくやといったもので、明らかに顔面でそれを受けとめたラウールが未だに直立不動を貫いているのが不思議なほどだった。
皆がぎょっとする中、水柱の頂点から真っ白な狼が跳ね上がる。
アォォーーン
荘厳な遠吠えが響き渡ったところでラウールが手を引き抜いた。
水鏡から指が完全に離れるとまた水塊は弾けるように掻き消えた。
「……しょっぴー」
「……逃げねえよ」
じりじりと後退っていた渡辺だが、さすがに最年少に呼ばれ立ち位置を変わる。
奇妙な緊張感があたりに包まれた。大トリとなったからか妙な期待が集中しているような空気だった。
ぎゅっと唇を噛んだ渡辺の左手が水鏡に触れた。
瞬間的だった。猫の怒り狂ったような声と共に水鏡から四方に炎が噴き出した。
「うわあっ!?」
阿部が悲鳴を上げて後退る。眼前をかすめた炎は何も燃やすことこそないが勢いは今までで一番強い。
高い天井すらも焦がす勢いの青い炎が編み合い、尾が何本にも別れた猫の姿をかたちどろうと――したところで、テディが渡辺を蹴り飛ばした。
あっと宮舘が気の抜けた声をあげる。炎は霧散し、あとにはテディのもふもふとした足を顔面に食らい転がった渡辺だけが残っていた。
「翔太」
「――っ何すんだよ！」
「アルト！ 残りのメンバーもさっさと回収しねえとマズいですよお！」
「は？」
呆然としていたアルトがテディの言葉に眉を寄せる。
しかし自称ビビりなイタチは主のそんな反応に構いもせず、先ほどよりもはるかに声を張り上げた。
「赤い風も緑の影も、白い水も、青い炎も！
全部、旧世代の神皇たちが司ってた力ですよお!!」
「なっ――」
二の句が継げぬ状態のアルト。今までにないほどに焦っている様子のテディ。
分からないのは阿部達だけだった。
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春原明香(プロフ) - 沙耶さん» コメントありがとうございます。オリジナルキャラクターも多い作品とはなりますが、最後まで楽しんでいただけると幸いです。 (5月20日 22時) (
レス) id: cf1a8a04fc (このIDを非表示/違反報告)
沙耶 - 続き待ってます！ (5月20日 17時) (レス) id: 6a6eda54e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年5月5日 20時
