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果たして二人に連れられたのは、妙な水鏡がおかれた部屋だった。
それなりに装飾の整った台に並べられてこそいるが、今までの豪華絢爛な様とは程遠く思える。
むしろ、物そのものが質素なせいか却って黒魔術染みた様相を呈している。
「結論から言うと、月渡りってのは得てして何かしらの力を持っている。
もっと身も蓋もなく言うと、何の力も持っていないやつはこっちに辿り着いた時点で死んでる」
「大体は内側から魔力がばく、」
「皆まで言わんでいい」
テディの口は例によって塞がれた。
少々遅かったので概ね何が続くのかは察したが、今回ばかりはアルトに心の底からの感謝を示す。
わざとらしい咳ばらいをいくつかしてみせたアルトは部屋の中央に座する水鏡の縁を叩く。
カンカンと金属らしい音を奏でた水鏡は、しかしその明らかな振動にも水面を揺らす気配はなかった。
「これはアーティファクトのひとつで『カルシンの写し鏡』だ。
仔細は省くが、この水面に触れるとそいつの力が分かると言われている」
こんな風に、と徐にアルトは背中に居たテディの首根っこをむんずと掴む。
ぎょっとしたのは四人だけではなく掴まれたテディ本人も同じようで、アルトォ!? と素っ頓狂な声をあげている。
ジタバタと暴れる獣を無視しアルトは躊躇なく水面に突っ込んだ。
「のあ゛ーーーー!!!!」
「テディーー!!??」
叫ぶテディと叫ぶラウール。場は完全にカオスになりつつあった。
ほら見ろ、とすべてを無視してアルトが顎で示す。
つられて水面を見やれば、確かにそこからいくつもの動物が現れては咆哮を繰り返していた。
「これは……？」
「こいつの魔法だよ。動物に関する力だから動物が現れる」
「動物の一部の能力を借りられるだけですう……
テディは位が一番低い妖獣なのでえ……」
入れた時と同じ勢いで引き揚げられたテディは濡れた様子がない。
だがその顔は明らかにしょんもりとしていた。
ひどい……ひどい……とあからさまにしくしく泣いてみせている相棒を背に戻し、アルトは己の指を水面に触れさせた。
けれど、今度は波紋のひとつも現れる気配がない。
「魔法を持たない者には反応しねえんだけどな。
俺はテディと契約してるからテディの魔法なら使えるけど」
ピッと水面から引き抜かれたアルトの指はやはり濡れた様子がない。
さて、と仕切りなおした彼は数歩下がり、水鏡を指さすのだった。
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春原明香(プロフ) - 沙耶さん» コメントありがとうございます。オリジナルキャラクターも多い作品とはなりますが、最後まで楽しんでいただけると幸いです。 (5月20日 22時) (
レス) id: cf1a8a04fc (このIDを非表示/違反報告)
沙耶 - 続き待ってます！ (5月20日 17時) (レス) id: 6a6eda54e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年5月5日 20時
