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アルクトゥールス＝テディ・フェステルはルザライト王国の第三王子。平たく言えば貴族を飛び越えて王族だった。
だとしたら入り口に馬車が用意されているとはいえ、王族がたった一人で森の中を動き回っていたんだ――という阿部のツッコミは城への道中で早々に解決された。
「月渡りの兆候が出たんですう。
諸事情あってどの国よりも早く見つけたかったから、内内で探してたんですよう」
「それで森にいたんだ？」
「他にもアルトの兄達も探してますよう。
結局、アルトの野生の勘が勝ちましたけどねえ」
六人乗りの馬車の中、ラウールの隣に座ったアルトの膝上に居るテディが語る。
そもそも月渡りというのは空に浮かぶ月を媒介に異世界から喚び出された存在を言うらしい。
そして月という神聖なものを介して現れた月渡りは、得てして何か凄まじい力を持っていることが多い。
「といっても喚ぶのは人間じゃないんですう。
ただの人間があんなにも大きな魔力の塊を媒介にしようものなら、
その前に自分が逆流する魔力に耐え切れなくなって爆発四散するのでえ」
「こっわ」
「だからあ、誰かの意図だとしても有り得るのだなんて神皇様しかいないのですう」
「神皇？」
アルトの正面に座っていた渡辺が問い返す。
それに対し今までのように意気揚々と語ろうとしたテディの口がふさがれる。アルトだ。
先ほどの森の中でも神皇の話題が出た瞬間に口を封じられたテディはジタバタと暴れているが、それすらも無視をして顎がしゃくられる。
「おら、国に入るぞ」
その言葉につられるように窓の外を見やる。
確かに遠くに見えていたはずの跳ね上げ橋が、既に眼前に迫っていた。
天よりもはるかに青い城壁。
そこから城へと続く道は白い石畳で整えられており、道端には等間隔に青い炎が入ったガス灯のようなものが並んでいる。
町のどれもが白い壁と青い屋根で統一され、走り回る子どもや家事仕事にいそしむ大人たちは活気にあふれている。
煌めく青が氷を思わせるというのに、それらで構成されるすべてはむしろ温かみの強いものばかりだった。
「うわあ、火が青い！」
「ルザライト王国は炎を司る青月の神を崇めている城郭都市の国だからな」
大きな青い炎を掲げた馬車はゆっくりと、まるで観光するような速度で走るのだった。
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春原明香(プロフ) - 沙耶さん» コメントありがとうございます。オリジナルキャラクターも多い作品とはなりますが、最後まで楽しんでいただけると幸いです。 (5月20日 22時) (
レス) id: cf1a8a04fc (このIDを非表示/違反報告)
沙耶 - 続き待ってます！ (5月20日 17時) (レス) id: 6a6eda54e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年5月5日 20時
