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目黒の指さす先にあったのは鍵のようなものだった。
拾い上げてみればそれは阿部の手とほぼ同じサイズをしており、ずっしりとした重みがある。
ヘッドの部分には大きな緑色の宝石。その宝石を金色の装飾が月を
「なんだろう、これ……」
「鍵？」
後ろから聞こえる問いに首を縦にも横にも振ることができない。
形としては確かに鍵だ。アンティークとファンタジーを融合させたような、不思議なデザインの鍵。
けれどそれが何かの役割という意味での鍵なのかと聞かれると、思い当たる節が全くない。
第一、だ。
「どっから来たんだ……？」
阿部は普段からこういったアクセサリーのような類の物を身に付けない。
けれどメンバーは一度もベランダに来ていない。
ならば上階からの落とし物か、と思ったが阿部の住むマンションはベランダが完全なるボックス型になっており、いくらなんでも窓の近くにまで落ちることも有り得ない。
つまるところ、完全に正体も出処も不明なブツだった。
「どうしたの？」
二人がずっと窓を開けたまま会話していたからだろう。不思議そうな顔をしたラウールがひょこひょこと近寄ってきた。
興味津々なのを隠す気もない末っ子に目黒は体をずらし、阿部は手に持っていた鍵を見せながら説明する。
一通り聞き終えたラウールはふうん、とよく分からない相槌を打って鍵を覗き込んだ。
「でも本当に綺麗だね、これ……何の宝石なんだろう」
「たしかに……」
「何々ー？」
気付けば他のメンバーもぞろぞろと寄り集まっていた。
ラウールが阿部に聞いたそのままを伝えている横、とうの阿部は宝石を観察しようと月光にかざすように掲げる。
元々半透明なのであろう石は表裏に装飾がないせいか、向こう側がよく見えた。
特に月は宝石と同じ緑色に染まりあがり、怪しい雰囲気がにじみ出ている。
それこそ、月と自分との間にいるウサギすらも緑のフィルターが掛かって……。
「……え？」
「どうした、阿部……は？」
気の抜けた岩本の声も無視して鍵を降ろす。やはり、そこにウサギはいた。
いや、ウサギのよう何か、だ。
長い耳も造形も確かにウサギだ。
だが、もふもふとした毛並みはラベンダー色をしているし、深い紫色の鹿の角のようなものが艶やかに耳に沿っている。
その角の間には雫型の紫の宝石が輝いており、何もかもが異質なそれ。
そんなウサギモドキが、生命体然と呼吸し、八人をじいっと見つめていた。
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春原明香(プロフ) - 沙耶さん» コメントありがとうございます。オリジナルキャラクターも多い作品とはなりますが、最後まで楽しんでいただけると幸いです。 (5月20日 22時) (
レス) id: cf1a8a04fc (このIDを非表示/違反報告)
沙耶 - 続き待ってます！ (5月20日 17時) (レス) id: 6a6eda54e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月千羽 | 作成日時：2023年5月5日 20時
