_今 夜_ _JIN_

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「なにもないよ」




自分で言って自分に聞こえてきた言葉に自嘲気味に笑う。



いつまで持つかわからないくらいに使い古してしまったこの体にむち打って、口角をあげる。



「応援してるよ、ソクジナ」



そう言うと聞こえてきた笑い声にまた、つと、体の力が抜ける。



私、あなたと知り合う事が出来て、本当によかったと思ってる。



こんなにも苦しいのに、もう居なくなってしまいたいくらいなのに、あなたの声をきくだけでこんなにも安らぐことが出来るんだから。



『ねぇ、A』



「どうしたの、ソクジナ」



『僕、君と出会えて良かったと思ってる』



「んふふ、なに、いきなり。私もそう思ってるよ」



『うん…うん、そうだよね！ワールドワイドハンサムと出会えたもんね！』



「テレビでもよく言ってるよね、それ。」



『うん、そう思わない？』



「高校の時も言ったでしょ？…私が知ってる中で、一番かっこいいのはソクジナだよ」



『しってる！』



たくさんつき続ける嘘の中で、ほんの一欠片の真実を。



ねぇソクジナ、これからきっとまだ嘘を沢山ついてしまうけど。



この思いだけはきっといつまでも本物であり続けるから。



あなたと出会うことが出来て良かった。



あなたの声を聞くことが出来て良かった。

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