零話 ページ2
一月。静かな風がそよそよと吹き、木々がカサカサと葉を揺らすこの日に、雄英高校の一年生A組B組合同戦闘訓練が行われる。
合同訓練運動場
これは授業の一環で行われるため、部外者はもちろん立ち入ることが出来ない。
しかし、今回のみに限り、一人の部外者の見学が承認された。はじめ、生徒はその者の存在を知らなかったが、近いうちに会うことになるだろう。
◇◇◇
オールマイトとミッドナイトは合同戦闘訓練を見学するため、運動場γに向かっていた。二人が会話を弾ませながら歩いていると、後ろから声をかけられる。
「オールマイト、先に向かってもよろしいでしょうか」
「！ああ、もちろん。香山くん、寄って」
「あら、見学の……。お早めに、どうぞ」
オールマイトとミッドナイトは道の端に避ける。その隣を会釈した一人の少女と、その少女の両脇を固める警官が通った。
少女の手首には、重そうな鉄製と思われる手錠が、しっかりとかけられているのが確認できる。
「……彼らは一体……」
「ああ、見学の子ですよ。今度はあの子の番ですから」
「個性を知るにはこうした方がよいということか……」
「ええ。校長からの提案、だそうですよ」
「ならいいが……」
オールマイトとミッドナイトは談笑しながらゆっくりと歩いている。
先程の彼らの背中はもう小さい。
オールマイトは小さくなった彼らの背を見て、ほほえんだ。
「しっかし、大丈夫ですかね？校長が提案したとはいえ、リスクはすっごい高いじゃないですか。見る気になれませんよ」
「それがまた、彼らを成長させることになるんだよ」
「本当ですかね〜？」
「本当さ。彼女には、生徒を変える力がある。私はそう、確信しているよ」
オールマイトはそう言うと、深く青をたたえる空を見上げた。
空はどこまでも青く、輝いていた。
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