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壊れかけのヒト ページ26






大会



そこで、Aの全てが終わった



1試合目。Aたちは勝った



ただ、A以外が取れるボールを誰も取ろうとはしなかった



全部、Aが取っていた



『…な、んで…なんで取らなかったの…!?行けたじゃん!!!私じゃなくても出来たのに!!!!!』



「うわ、ビックリした…あんたそんな大声出たんだ!?」



「私たちが取るよりAが取った方が攻撃しやすいじゃん?」



『っ……なら、練習すれば良かったじゃん!!!なんで、なんで上手くなろうとしなかったの!?なんで人任せにっ』



「天才には凡人の気持ちなんか分かんないよ」



『ぇ』



Aは天才なんかじゃなかった



本当に初めは下手で、何回やっても上手く出来なくて



でも諦めずに努力し続けた。誰よりも努力した



それを“天才”その一言で済まされた



どんなに辛かっただろう



3年間一緒にやってきたチームメイトは、Aの努力を何一つ分かってなかった



「…ま、次も頑張ろ!!A頼りにしてるからね!」



信頼、期待



それが積み重なって、Aは耐えられなくなった



2試合目



Aの足は動かなくなった



精神的なものだった






医者「…治らないこともないと思います。精神的なものですし…乗り越えれば、大丈夫です。何か怖いものなどありますか?」



『……走るのも、バレーも、怖いです。人も怖い』



夜「っ…」



Aはバレーを辞めた



そして、仮面をつけた



『…あ、衛輔!!おっはよー!!!!!』ニコッ



夜「ぇ」



俺は、きっと…バレーの“代わり”だ



「うわ、出たよ…男たらし」



「凄いよね、夜久くんにさ…前まであんなんじゃなかったのに」



「やば…」



でも、それでいい



俺がいることでお前が壊れないでいてくれるなら、それで



夜「…なぁ、A。俺さ、お前を守りたいんだ」



『…………あはは、何言ってるの。衛輔はちっちゃいんだから私が守る!!!!』



夜「…なんだよ、それ…はは……」



『…そんな顔、しないでよ。大丈夫だよ?私は。…ねぇ、衛輔。私ね、高校でマネージャーやろうかな』



夜「!」



『…バレーは怖いけど……やっぱり、好きだから』



本当にお前は強いよ

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作者名:犬猫 | 作成日時:2020年8月6日 17時

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