張り付けの笑み ページ26
side 松葉
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幸せだ。
やっとそう思え始めても…
何時も…
自分が，判断を違えて来たばかりに，
大切な人を失ってしまう。
守りたい人を傷付けてしまう。
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そんな己の惰弱さを何度呪った事だろう。
…………。
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しのぶくんや珠世さん達と協力して，
"鬼を人間に戻す薬"が完成が目に見えて来た。
松葉｢…出来た。)ｶﾞﾀｯ｣
その間合間を縫って調整してきたものが漸く完成した。
出来たんだ，今迄で一番強い五種類の毒…。
何重にも執拗く構想した僕の
此であの鬼は，死んでくれるだろうか…。
松葉｢ﾌﾙﾌﾙ)……気が早い。｣
落ち着かないと…。
自身の身体経過も良好…。
"待て，兄者。躑躅には毒が有るぞ
…無いのもありはするがその種には毒性がある…"
"え？でも，僕達妹と一緒に庭でよく啜って居るよ？"
"屋敷の庭のは大丈夫なやつだ。
ﾊｧ…全く嫌だろう？
"知らぬ間に自ずから毒を啜る"など…
末恐ろしいにも程がある…。俺は鳥肌が止まらんよ。
其れで身体を壊せば元も子も無かろうに…
全く，こんな"甘い毒"で。"
あの奇策を講じて早四年…。
身体が鬼になっているから普通に動けるけど…
今の僕の戦闘能力は格段に落ちきっている。
もう，五年前の様には戦えない…
珠世｢ｺﾝｺﾝ)松葉さん，少し良いですか？｣
鬼なんて大嫌いだ…。
彼奴らは，僕の大切なものをいつも奪ってくから。
僕は唯，皆と生きたかった。
一緒に笑って過ごせれば其れで良かったんだ…。
鬼という存在に対する憎悪を，
珠世さんや愈史郎さんのような良い人達に
向けてしまいそうになる自分さえ許せない…。
松葉｢すいません，どうしましたか｣
珠世｢貴方に先程取ってきて頂いた
試験記録を，預かりたいと思いまして…｣
松葉｢分かりました，着替えたら直ぐ向います｣
珠世｢では用済んだら研究室へで…｣
鏡に映る自分の顔は酷く疲れている。
顔色が悪い…。
女の様に化粧をするようになったのは何時からだろう…
自然体に誤魔化せているか何時も不安だ…。
"兄者"
松葉｢っ!!き，きよた｣
嫌だな…幻聴，幻覚…副作用かな…。
また弟を重ねてしまった…嗚呼…だけど…。
松葉｢ﾆｺｯ)｣
心配しないで清竹。
もう，大丈夫だから，
"彼岸柱として"
"お前の兄として"
僕が責任持ってやり遂げて見せるからね。
換えの隊服に着替えた僕は，
羽織を肩にかけ，珠世さんの元へ向かった。
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作者名：あいぞめ | 作成日時：2020年2月26日 0時
