オレとオマエ、睨み合い中。【青】 (ページ3)

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「うちのトーストは食べておくべきだと思う。それだけの価値がある。」

店員はしつこかった。

私はなんだか面倒になってしまい、固まった半笑いで『じゃあ』とだけ答える。

さっさとトーストを食べて、鍵を貰ってここから消え、荷物を整理したいのだ。

店員はまず、コーヒーの準備から始めた。

コーヒーの種類が一つだけということは、今ここにいない店主のこだわりなのだろう。

ご本人はかなり高齢そうだから、店のことはほぼこの店員に任せて実質隠居しているのかもしれない。

彼がコーヒーをドリップしている間、女子高生…ちったんは喋り続けていた。

『ありがとうございます』

ち「どういたしまして」

コーヒーが出来上がると、運んできてくれたのはちったんだった。

店員はカウンターの中から出ないまま、食パンの袋を開けている。

ん、このコーヒー、予想よりも美味しい……ちょっと悔しいぞ、これ。

驚いて店員の方を見ると、何やらガス台に向かっていた。

「網で焼くの。めんどいけど、ばあちゃんのこだわりだからやめるわけにもいかねーし。」

カウンター内を窺っている私に気づいたのか、彼はそう説明した。

ばあちゃん、ということは彼は店主の孫なのか。

そりゃあの接客態度でクビにならないわけだ。うんうん。

ほどなくして、トーストがとどいた。

厚切りで、十字に切れ目が入り、中心にはバター。

ち「ジャムつけて食べてね、ジャム超美味しいから、絶対ね！」

と、トースト皿の端に置かれたおちょこサイズの容器を指さす。

齧ってみると、ジャムの酸っぱさに少し驚いた。しかし苦味はなく、こっくりとした味わいでバターとの相性がとてもいい。

…あんずジャムか。

ち「不思議なんだけどね。ずっと見られてると、悪くない気分になってくるみたいな」

ちったんの女子高生トークは、私がトーストを食べている間も続いていて、今も進行中。

トーストの追加注文を迷いつつ、なんとなくその会話を聞いていた。

ち「最初は、なんかヤバい人かもって思ってたんだけど…。

だって彼、いつも気がつくとあたしのこと見てるわけだし。駅のホームとかにいるし。コンビニとかにも」

「うんうん」

ち「このあいだはね、本屋さん」

「本屋さん？」

ち「うん。なんかね、ミステリ小説が読みたくなったの。」

…おっと、雲行きがなんだか怪しいぞ。