オレとオマエ、睨み合い中。【青】 (ページ17)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:34,330 hit

. ページ17

渡「阿部ちゃんがいるからな！佐久間はともかくだけど」

佐「おい！」

阿「俺、今までの成果が評価されて今年度は受け持つクラスが多いから……多分今までみたいに書類整理はできないかも」

佐「俺の出番じゃん！！」

阿「いやいや、今はもっと頼れる人がいるじゃん？」

「ね？」と首を傾げながら、私の方を見る阿部ちゃん。

『……え、私？』

阿「当たり前じゃん」

『やだやだやだ！やんないよ！？』

渡「おーいー頼むって！」

『報酬くれるならいいよ』

渡「……考えとく」

佐「ほらっ！できたー」

と、むくれている翔太を横目にさっくんが一人一人のお皿にもんじゃをよそる。

『…ん、意外と美味しい』

渡「だろ？」

佐「ここ佐久間の知り合いの店だけどね」

どうやらさっくんは人脈が広いらしい。

阿部ちゃんは長い間連絡を取っていたから気が付かなかったけれど、翔太とさっくんを見て、十数年間で人はやはり大いに変わるんだな、と感じた。

･･･

阿「もー佐久間、飲みすぎ！」

佐「んにゃ、、阿部ちゃーーん！」

べろべろに酔って抱き着くさっくんを、「ちょ、邪魔！」と辛辣に剥がす阿部ちゃん。

阿「はぁ…ごめん、俺はこの酔っ払いを介護しなきゃだから…」

『あはは…』

渡「頑張れよ…」

佐「阿部ちゃーん！いっくぞー！」

覚束無い足取りで騒ぐさっくんを宥めながら、二人は夜道に溶け込んで行った。

一方で私は、同じ住宅の店員と一緒に歩みを進める。

『…さっくんってお酒弱いんだね』

渡「ははっ、今日集まったの全員酒弱いけどな！佐久間はテンション上がって加減ミスっただけ」

『なるほどね』

と、ここで会話は途切れた。

いつも無駄に動く口が動かないのを不自然に思い、翔太の方を向くと何か言いずらそうな顔をしている。

『なに？どうかした？』

渡「…いや、ふっかと結婚してたことが驚きすぎて」

『あー……』

なるほど。そこに首を突っ込むのか。

翔太がもう一度口を開きかけた瞬間、私のポケットから着信音が鳴った。

翔太に軽くごめんと謝り、スマホを見てみると

"深澤辰哉"

確かにそう表示されていて、私の胸が少し昂るのを感じた。

『もしもし？』

深「もしもし。久しぶりの雪森はどう？」

引越しの準備中にも聞いた、落ち着く声がする。

初めて過ごす日常→←.