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───すき？
恥ずかしそうに伊藤の視線が俺の斜め下あたりを向く。あー、だとかうー、だとかよく分からない音を添えながら、男にしては長い横髪から覗く耳は真っ赤になっていた。
しかしながら、今の場面において可笑しな点がある。
それは、俺たちはそもそも断じて付き合っていない。確かに俺とコイツは同期という分類で、まあ特別親しくもなければ仲が悪いわけでもない。学校で言うところの同じクラスで挨拶ぐらいは交わすけど、一緒のグループにはいないようなそんな間柄だった。
そう、目の前のコイツから別れようと話を切り出されるまでは。確かに、確実に、そうであったと俺は認識している。だから、そもそも伊藤とは付き合ってないし、友達以上恋人未満のようなドキドキ展開があったわけでもない。もはやそれ以前の友達未満だったというのが俺の見解だ。
「だ！だから！別れるっていうのは嘘だから…！まだAくんと一緒に観たい映画もあるし、食べてみたいご飯もある、読んで感想を言い合いたい本だってまだまだあるから、…だから、嘘でも別れたいなんて言って、ごめんなさい！」
自白(？)をしたのに、ただ黙っている俺を怒っていると思ったのか焦ったように喋り出す伊藤。どうやら「本気」で自分と俺が付き合っていると思っているらしかった。スベったときに見られる、首がどんどんめり込んで肩に埋まり、さらには絵に描いたようなションボリ顔。現実を見ろと追い討ちをかけるのすらも可哀想に思えるほどの反省様で思わず俺は笑ってしまった。
「…、許して、くれるの？」
「…うーん。マジでよく分かんねーけど、もういいよ。許してあげる」
「ほんと！？じゃあ、その…、今日一緒にご飯、とか」
「はは、いいよ。行こう」
「いいの！？」
だから断じて、絆されたとか、伊藤が可愛く見えたとか、そんなのではない。はず。
──
エイプリルフール？😯
おはよう崩壊、またきて世界 ／ knzk→←知らないままなら世界はそのまま ／ it
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作者名：ねむる | 作成日時：2022年3月15日 23時
