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「イトーちゃん、帰ろう」
投げつけていたアウターをご丁寧に身体に巻いて、クニの家のドアに凭れ掛かっている男の肩をとんとんと叩く。飲んで、はしゃいで、吐いて。飲み会で起こる全てのイベントを一人で終えた彼は満身創痍ながら「んん〜゛」と眠たげに唸った。
とにかく深い睡魔に意識が乗っ取られる前に急いで立ち上がらせて肩を組む。千鳥足ながらヨタヨタと歩いてくれるだけイトーちゃんはまだマシかもしれない。
「Aちゃん、」
「ん？」
「また、のもうよ…」
「はは、いいよ」
半分目蓋が閉じかけながら、舌ったらずでイトーちゃんが話す。クニの家で大惨事を招いたものの、彼も決して悪気があるわけではないのだ。
「きっと、たのしいよ…」
「そうだな、俺も楽しいと思うよ…って、イトーちゃん？」
俺の返事を最後にイトーちゃんが本格的に寝始めようとしているのか、半分乗っかっていた体重が一気に重たくなる。ひとまず休戦、こんなまだ寒い外で寝落ちられるほど彼も頑丈ではないだろう。危なくないように誰もいない歩道の端でイトーちゃんを抱えて座る。
「〜んん、A…」
「なに？」
「ん゛、だめだ、───吐く」
「え？！」
俺の片膝が彼の生暖かい“ナニ”で濡れる。そして全てを出し切り、スッキリした顔で死んだように眠るイトーちゃんの寝顔を俺は忘れたことはない。
『I love you』を伊藤風に訳すと「貴方の腕の中で死にたい」になりました。
https://shindanmaker.com/730931
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作者名：ねむる | 作成日時：2022年3月15日 23時
