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リボンをキュッと締めながら、なんとなく思ったことを口に出す。
「子供たちはこの期間、強請ればお菓子が貰えるなんて羨ましいわ」
「どこの国の風習なんですかね？俺の地元では無かったので本当にあるものか疑わしいくらいですけど」
「私の地元にもなかったわ。なんなら子供だけじゃなく大人も、お菓子だけじゃなくて他のものも強請れたりしたらいいのに…………」
私なら何を強請るだろう。目の前のスルメをみると、思い浮かんだものがあった。
「ね、サンジくん。トリックオアビール…なんちゃって」
言ってみると少し恥ずかしい。照れで笑いが込み上げそうになった時、
「くそかわいい……」
サンジくんがボソッと漏らした言葉が耳に止まる。もしかしなくても、それは私に向けられた言葉だろう。
目を丸めてサンジくんの顔を見ると、まるで「言ってしまった」というような、少し焦った表情で口を抑えている。
「え、っと……？」
彼は茶化しなんてしないし、今のは咄嗟に出た言葉のように思えた。
私は彼のこの言葉の真意が知りたくて、じっと目を見つめた。
「す、すみません。でも本当に、そう思ったから口に出してしまったというか……」
申し訳なさそうに目を伏せるサンジくん。
茶化しや子供扱いで"可愛い"と言われることはあっても、こんなに面と向かって言われたことはこれが初めてで、私はなんと反応していいかわからず戸惑ってしまう。
でもひとつ分かるのは、私は今、間違いなく喜んでいる。
「可愛い要素なんてどこにもなかったと思うけど……サンジくんがそう思ってくれたなら……嬉しいわ」
最初の一言は余計だけど、素直になれない私なりに本音を言ってみる。
私がそう伝えると、サンジくんは上目遣いで私と目を合わせ、恐る恐ると口を開く。
「俺に"可愛い"って言われるの、嫌…ですか？」
ギュッと心臓が掴まれたのかと思った。なんだか目がグルグル回り出した。
震える口で精一杯
「いｯ…嫌じゃ、ない、です」
そう返すと、サンジくんは目尻を下げて「よかった」と息を吐いた。
私はこれ以上その場にいられず、簡単な挨拶をして女子部屋に駆け込んだ。
誰もいない静かな女子部屋。可愛らしくなったスルメイカのボトルを抱えた私は、その場に座り込んだ。
「ビール飲もう」
そう決意した私は、ハイテンションで突入してきた3人組にスルメを渡し、ラッピングを開けた3人から大ブーイングを浴びながら冷えたビールを煽った。
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続く
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作者名：だてこ | 作成日時：2020年8月24日 19時
