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「どう考えたってあっちが海だろ!いいから黙って着いてこい!」
「どう考えたらあっちが海なのよ!明らかに山が見えるでしょ!?」
結局予想していた通りに町では何も買えず、私達は町と村を抜けて船を目指していた。
ただひたすら、来た道を辿っているだけなのに……
「だからこっちよ!いいからお姉さんに着いて来なさい!」
「お姉さんだぁ?そんなのどこにいるんだよ」
「キィー!」
10m歩いては口論をしている私達。そのせいでとっくに集合時間も過ぎてる。
腹を立てながら、埒が明かないとゾロの腕を掴んで船の方向に引き摺ろうとするも、逆に掴み返されて真逆の方向に連れて行こうとされる。
「はーなーしーて!!いい加減もう帰りたいのよー!」
私が全力で抵抗していたその時、通ってきた村の方から慌ただしい足音が複数聞こえてきた。
「! 敵襲か?」
「なんでよりにもよって今なの!」
警戒してその方向を見ると、お鍋や箒を持った男性や女性と村の警察官らしき人がこちらを目ざして走って来ていた。
一般市民…?
不思議に思いながら一応戦闘態勢に入ろうとした時、1人の男性がこちらを指さして叫んだ。
「お巡りさんアイツだ!あの緑の髪のやつが女の子を誘拐してるんだ!!」
「「……はぁ?」」
キョロキョロと周りを見渡すも、ここには緑の髪のやつなんてゾロしかいない。
ゾロが女の子を誘拐………???
「私!?」
「オレか!?」
顔を突合せて同時に叫ぶ。驚きのあまり硬直してしまい、気付けば複数人の村人に囲まれていた。
「さあ、観念しろ。誘拐犯め」
「小さな女の子を誘拐なんてどんなヤツだと思ってたら、なんて凶悪顔なんだ!」
「怖かっただろう?お嬢ちゃん。さぁ、おばさんの所においで」
ゾロに向けられる軽蔑の目線と、私に向けられる暖かい目。何が何だかわからないが、とりあえずひとつ……
「私は小さくなああああい!!!」
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作者名:だてこ | 作成日時:2020年8月24日 19時