ショコラの魔法～Ω story～ (ページ5)

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5話ページ5

「感情か思い出……｣

あたしはルージュが言った事を反芻して考える。
生憎、私の頭はそんなに出来が良い訳では無いのでなにも思いつかなかった。

「……チョコを１つ食べる度に代償を１つ払わなければならないなら、２つも食べるとその人がその人じゃなくなってしまうから？｣

「ピンポーン。正解ですよ、楓香さん。あなたは中々頭が回る様ですね｣

こいつは意外と頭が良いからあっさりと答えを言った。ルージュはそれを褒めるがあたしは少し言い方に腹が立った。
あなた『は』と言うことは、あたしは頭が回らないと言ってるようなもんだ。……だけど実際その通りだから何も言えなくて、結局はもどかしい気持ちになるんだけどさ。

「その通りです。チョコを２つも食べると『感情』２つか、『思い出』２つ、もしくは『両方』が代償ですので、その人がその人じゃなくなってしまいます。……ですが楓香さん。私は『なるべく』チョコレートを１つしか売らないと言いましたよ。このことを聞いても尚、チョコレートが２つ欲しいなら私はあなたに売ろうと思います。……どうしますか？｣

そう言ってルージュはあたしらのことを薄ら笑を浮かべながらじっと見つめるその紅い瞳はどこまでも冷たく、そしてあたしらを試しているようにも感じられた。
あたしは横目でちらっと楓香を見た。

……こいつは、バカか？

なんでこんな状況で、いい事を思いついた！みたいな顔して笑っていられる？

「ありがとうございます！ルージュさん！私、わかったんです！私が面白い新聞を書いて、チョコの力で読んでもらう！チョコの力を借りるのはきっかけ作りだけで良かったんです！後は私が頑張るだけでした！ありがとうございます！おかげで私が私でいられます！｣

あたしは多分開いた口が塞がってないと思う。
え、こいつが言ってることは合ってるんだろうが、結局はチョコの力を借りるんだな。まあ、当初の目的はチョコを買うことだからいいか。

「……ふふっ。わかりました。それがあなたの答えですね｣

ルージュは笑みを深くしたが、その理由はあたしにはわからなかった。