検索窓
今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:15,383 hit

4瓶目 灰被りのあの子 ページ5

皆様、シンデレラという有名なお話は
ご存知でしょうか。
……そうですそうです、
ガラスの靴が出てくるあの童話です。
あんなロマンチックな結婚に憧れる
小さな女の子も多いですよね。
ご存知の方も多いかと思いますが、
「シンデレラ」という言葉は
継母によって付けられたあだ名であり
とんでもない悪口でございます。
英語で「Cinder」は灰、
彼女の本名「Ella」と合わせると
「灰被りのエラ」という意味でして。
なんと幼い悪口でしょう。
……実はわたくし、
シンデレラが今の原点であり頂点である
ヒロインの名前ではなく
単に灰被りという意味だった頃
彼女に会った事があるんです。
一つ、あなたに聞いて頂きましょうか。


わたくしはその冬、街を歩いていたんです。
買い物の荷物の入った紙袋を抱えていました。
人々がちらちら雪が舞う街を歩いていく中、
一人だけ様子のおかしい娘がいまして。
彼女は薄いエプロンドレス姿で
道端に座っていたのです。
それも、防寒具は一切着けずに。
明らかに何かおかしいと感じたわたくしは、
彼女に近付いて店に来るよう誘いました。
微かに頷いたその顔色、今でも覚えています。
言葉では言い表せないくらい冷えていました。

二人で店に戻ると、彼女を暖炉の前に座らせ
毛布を掛けてやりました。
わたくしが淹れた紅茶を飲むと
僅かながら元気になったようです。
少し落ち着いてからわたくしは聞きました。
何故、あの場所にあの格好で居たのか。
彼女はぽつりと呟きました。
怒らせてしまった自分が悪い、と。

自分は毎日継母や義姉達に虐められていて、
掃除などの日常的な事から自分の態度まで
少しでもダメだと罰を受ける。
今日は他の仕事に追われ、
洗濯物を取り込むのが遅れてしまった。
雪のせいで服がダメになったと叱られた後
罰として外に追い出された。
もう生きていくことが辛い。
彼女はそう語ってくれました。

涙を浮かべてぼんやり
暖炉の炎を見つめる彼女の姿で
わたくしは分かりました。
彼女に足りないものはアレ、
そして自分がそれを得られなかった結果
どうなってしまったかまで思い出した。

*→←3瓶目 新米サンタの憂鬱



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.5/10 (115 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
39人がお気に入り
設定タグ:きみの瓶詰め , オリジナル , 瓶詰め , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ワタクシ(プロフ) - レイさん» いつもお世話になっております……!そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです!これからもよろしくお願いいたします! (2020年5月11日 22時) (レス) id: cfda2d1e9e (このIDを非表示/違反報告)
レイ - 本当に綺麗な文章で感激しています!この作品大好きです!これからも応援しています!! (2020年4月20日 13時) (レス) id: a4e5c10c36 (このIDを非表示/違反報告)
ワタクシ(プロフ) - 関西人さん» 長いこと留守にしていましたが、貴方様のコメントで励まされました.......!素敵な言葉をありがとうございます。もう一度書きたいと思えました。これからも応援してくださる方のために書き続けますので、何卒よろしくお願い致します! (2019年10月12日 22時) (レス) id: d168fc46ca (このIDを非表示/違反報告)
関西人(プロフ) - 凄く綺麗な小説ですね!大好きです。もっと早くに知れば良かった... (2019年9月8日 16時) (レス) id: 35e35c5ca7 (このIDを非表示/違反報告)
ワタクシ(プロフ) - つばさ、別アカ2さん» 返信遅れて申し訳ありません、お褒めの言葉ありがとうございます!諸事情で「きみの瓶詰め」の方は停止中ですが、こちらをお楽しみ頂ければ嬉しいです。 (2019年2月24日 21時) (レス) id: 91d5b5e9ed (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ワタクシ x他1人 | 作成日時:2018年12月19日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。