幻想小噺

1瓶目 店主の独り言 ページ2

ああ、いらっしゃいませ。
あなたも瓶をお求めに？
……そうですか、それでは
お掛けにでもなって下さい。

改めて自己紹介させて頂きます、
わたくし瓶詰め店の店主です。
以後お見知りおきを。
この店は広告も出さない小さな店なのでね、
お客様がいらっしゃるのは嬉しいんですよ。
思わず饒舌になってしまいそうです。
そういう訳なので、
あなたの瓶詰めとの出会いの隙間に
わたくしの小話でも聞いてくださいませ。

……え？聞いてくださるんですか？
お客様は相当人が良いようで……
わたくしテンション上がって参りました。
まずは簡単な小話からでも致しましょうか。

……ああ、そうです、知っておりますか？
わたくしはこの店の店主ですが、
店主というのは副業にございます！
あらあらそんなに驚かれて……
知っておられなくて当然ですね、
誰も興味が無くお聞きになりませんので、
この話をするのはあなたが初めてですから。

わたくしの本業は精神癒術師、
悩みを抱える方々の話を聞き
ココロの中のモノを取り出して
｢人生｣という旅路の
息抜きのお手伝いをする仕事です。
……ゴチャゴチャ言っても分かりませんよね。
つまるところカウンセラーの様なものです。

精神癒術師と店がどう繋がるかと言いますと、
相談者のココロから取り出した想いのカケラを
その人の求める癒し……幸福の象徴に変えて
瓶詰めにしているのですよ。
試しに友人にやってみた所好評でして、
相談者には癒術のついでに渡しています。
自分で作ったものの販売もしておりますよ。

そうそう、あの時のあの方は
素晴らしいカケラを持っていましたね……
一度わたくしに聞くと言ったらそれまでです、
最後まで付き合っていただきますよ。

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