81.知らない場所 ページ38
『ん……』
目が覚めた私は、体を起こすと辺りを見回した。
どこかの部屋なのだろうか、ベッドに寝かされて居たようだ。
真っ白な清潔感のあるベッドから起き上がり、室内を見渡す。
普通の部屋だが、ベッド以外子家具はなくて、窓もない。
扉は一つ、フローリングの床に白い壁紙の部屋で、何だか居心地が悪い上に、息が詰まる様な感覚を感じた。
試しにドアノブを回してみるが、鍵が掛かっているようで、開かない。
この部屋に閉じ込められたのだと分かるが、倒れる前の記憶を思い出して、唇を噛む。
学秀の仕業か……
いったい何の理由で私をこんな所に閉じ込めたと言うのか、それを、問い質したいが、生憎当人は居ないし、私は出られない。
ふむ、面倒な事になったな。
せめてもの救いは、寝ている間に着せられたのか、キャミソールと、短パンと言う何ともラフな格好だったが、服があるだけましだった。
因みにパンツを確認すると、出かける時までに履いていた物とは違かった。
下着まで別物か……
私は学秀に自分が身に付けている物に、夫の図らいで発信機や盗聴機が付いている事は、伝えていない。
だが、まるでそれが分かっているかのように、別物に変えられている。
まさか、学秀以外に……
そんな事を考えていれば、突然ガチャガチャと鍵が開く音が聞こえてドアの方に顔を向けると、ドアが開いて外から学秀が入って来た。
学秀「母さん、目が覚めたんだね。
良かった。」
『学秀、これは何の真似だ？
私をここから出せ。』
学秀「その喋り方は、嫌いなんだけど。」
『私は怒っているのだ。
こんな所に閉じ込めて、お前の狙いは何だ？
私をどうするつもりだ。』
学秀「どうって、母さんを助ける為だよ。
母さんはここに居てくれれば良いんだ。」
『私を助ける？
閉じ込めてるだけで、何の説得にもならんぞ。』
学秀「いずれ分かるよ、母さん。
多分父さんもそろそろ来るだろうし、そうしたら……助かるんだ。」
學峯が来る？
あいつ、どうやって……
学秀「だからそれまでは僕とここで待ってよう、母さん。」
『………断る。』
学秀には悪いが、私はこいつを倒してここを脱出せねばならんのだ。
息子相手に大人気ない気持ちもあるが、私は首の後ろに意識を集中させる。
すると髪と同じ色のピンクブラウンの触手が現れた。
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作者名：壱 | 作成日時：2020年7月13日 12時
