73.愛しい我が子＊ ページ30
トロピカルランドを出ると、私達はホテルに向かった。
學峯には悪いけれど、学秀の事は私が聞いてあげなきゃいけない事よね。
そう思い、私は身に付けていた物を全て脱いだ。
そしてホテルに用意してあったバスローブに身を包む。
学秀「母さん、来て……」
『うん、なあに？』
息子の居るベッドに向かうと、その隣に腰掛けた。
学秀「母さん……僕は、僕は母さんを助けたい。」
『私を？
前にも言ってたわよね。
私の体から触手が抜けたら死ぬって……
でも學峯がいるし、そんな事にはならないから大丈夫よ。』
学秀「でもそれじゃあ、母さんは助からない。」
『えっ……？』
じゃあ息子のやろうとしている事は何なのかしら。
学秀「それに、ここまで来た代償を払わなきゃいけない。
そうしたらもう、一緒には……だから、だから僕は……母さんに忘れて欲しくなくて……」
何かに悩んでいるのは分かるけれど、きっと素直には話してはくれないかしら。
だから時間を掛けて学秀の話しを聞いてあげなきゃ。
『私は学秀の事なんて忘れないわ。
貴方が最初に来てくれた時だって、ちゃんと分かったでしょ。
それに、大切な我が子を忘れるわけないじゃない。
お腹を痛めて、血を分け与えた子なんだから。』
学秀「母さん……」
おっきくなっても、やっぱりまだまだ子ども。
ポロポロと涙を流して泣く学秀が、幼く見えてかわいい。
愛しい子。
膝立ちになって、手を伸ばして学秀の頭を撫でる。
『大丈夫、母さんは忘れないから。
学秀の事、ちゃんと覚えてるから。』
学秀「じゃあ、キスして……」
『えっ、あの……』
学秀「これで、最後にするから。
だから、母さんからして欲しい……」
訴えかける様な物欲しそうな瞳に、私は弱い。
そんな顔をされたら、もうだめとは言えなくなるじゃない。
『これで、最後よ……』
そう伝えて、私は自分から学秀に近づくと、唇を重ねた。
バチンッ！！
『うっ….…！』
刹那、背中に電撃が走り私は意識を手放した。
学秀「ごめんね、母さん……」
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作者名：壱 | 作成日時：2020年7月13日 12時
