3.同僚の行くへ ページ5
こんなにも私達がタコを探すのには、ある理由がある。
単に仲間だからと言う理由だけではなく、あいつは今まで集めた触手の残粒子を全て持って居なくなったからだった。
何を考えておるのだあのバカタコは!!
あれ程触手を危険視していた奴が、どこに何の目的で触手を持って行ったのか、その理由を何故伝えない?
だからこそ、私達はタコを探している。
『學峯、お前はタコの行動をどう考える?』
全て朝食を食べ終わった私は、口元をタオルで拭う。
學峯「あまり多くを語らない人だからね。
ただ、理由もなく行動する様な人でもないだろう?」
學峯の言う通りだ。
タコは理由もなく行動する様な奴ではない。
だが……
何かしら伝えて欲しいと思った。
何も伝えず居なくなるなんて……
まるで信用されていないのではないかとさえ、考えてしまう。
仮にも我々は昔の同僚だと言うのにな。
學峯「君も妬ける程に、心配性だね……」
空になった食器を重ねた夫は私の隣に腰掛ける。
『一応、同僚だったからな。』
學峯「同僚ね……」
學峯は苦笑いを浮かべると、私の頭を撫でる。
學峯「それなら、良いんだが。」
『相変わらず、嫉妬深い男だな。
私はお前以外の男を婿に取るつもりはないぞ。』
學峯「今の所はだろう?
君だって、色々嗜好は変わる訳だしね。」
『はっ、男の趣味も変わると言いたいのか?』
學峯「違うのかい?」
じっと見つめる紅眼に、私は鼻で笑ってやった。
『ふっ、安心しろ。
私が求める男はお前だけだ。』
學峯「だと良いんだけどね。」
顔を寄せた夫は私の唇に自分のそれを重ねる。
そして顔を離すと、重ねた食器を持って立ち上がった。
學峯「仕事に行ってくるよ。」
『ああ、気をつけてな。』
夫の背中を見送った私は、もう一眠りするかと思い、目を閉じた。
46人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翡翠(プロフ) - 更新大変だと思いますが身体に気をつけて頑張ってください (2020年4月17日 7時) (レス) id: 3260124100 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:壱 | 作成日時:2020年1月22日 19時