13.調査の実際5 ページ24
『自 殺しようとしたら、理事長先生に止められたの。』
学秀「えっ？」
目を見開き固まる彼を他所に、通り過ぎて行く。
目的の場所に向かう私は、さりげなく後ろを確認する。
学秀「待ってくれっ！」
浅野君に呼び掛けられてはいるが、私はそれを無視する。
理事長室の前に着くと、扉をノックをしようと手を伸ばすが、私の手首は横から伸びた手に掴まれた。
学秀「自 殺って、どういうことだい？」
『浅野君には、関係ないでしょ……。』
学秀「クラスメイトの問題なら、関係なくなはないよ。」
それが本心からの言葉なら、喜んで相談に乗るんだけど。
作られた微笑み。
その目は私ではなく、別の誰かに向けられたもの。
『ねぇ、手を離して。
じゃないと声を出すから。』
学秀「えっ、あっ….…ごめん。」
申し訳なさそうに謝る姿に、今は本心からの言葉だと分かる。
普段からそうであればいいのに。
もったいないなぁ。
その後私は理事長室の扉をノックした。
中から返事があったのを確認し、扉を開けて入室した。
浅野君も一緒か。
學峯「浅野君と、花谷さんか。」
学秀「理事長、生徒会の資料をお持ちしました。」
私は少し離れた所で二人を観察することにした。
そう言えば、優奈さんは言ってたかな。
＊
優奈「旦那とね、息子って仲が悪いの。
あ、えっと、悪いって言うかね、お互いに冷めた関係みたいな感じで……
私、いつもその板挟みなのよ。」
その時の優奈さんは、どこか寂しそうに見えた。
彼女は本当は家族仲良く過ごしたいのだろうけど、それが敵わないのが、辛いのだろう。
だから、お店に来てくれる理由の一つでもあるのかもしれない。
優奈「私、女の子も欲しかったのよね。
Aちゃんみたいな子がいてくれたらなって。」
そう言って笑う彼女は、本当にそう願っている様に見えた。
＊
淡々とした業務的な会話が終わり、浅野君は退出して行った。
去り際目が合ったが、私は自分から逸らした。
學峯「待たせたね。
それで、今日はどうしたんだい？」
明日も来るよね的なオーラを出しておいて白々しい。
全く、この人は苦手なタイプだ。
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作者名：壱 | 作成日時：2019年6月21日 23時
