私の希望 ページ28
部屋に着くなり、私はベットに投げ出された。
「昴さん……？」
「あの青年は何ですか？」
昴さんもまたベットにへと上がり、私の前にへと迫る。
何だか近くて、顔を背けられない。
それに、体が熱くて……
「それは……」
体に刻まれたあの男の熱を思い出して、私は俯く。
こんな時に….…
忘れたいのに、忘れられない感覚に頭が混乱する。
「彼の事をヒズミと呼んでましたね。
ヒズミ君とは、どういう関係なんですか？
まさか……本当に結婚する仲なんですか？」
「違う……
あれは、その、ヒズミが勝手に言ってるだけで……」
「なるほど。」
少し空気が和らぎ、昴さんは満足そうに微笑む。
だがそれはすぐのことで、彼は私に近づくと、壁に手を突いた。
「そう言えば、ヒズミ君は言ってましたね。
貴方と沢山エッ チをした仲だって……」
「それは、違くて……」
ヒズミが勝手なことを言うから、もしかしなくとも昴さんは勘違いしてたり……
「彼が良いなら、僕も有りですよね……」
「はっ？」
思わず目を見開き、昴さんを凝視してしまった。
この人、何を言ってるの？
彼の手が伸びて、私の髪に触れる。
「好きです、Aさん……」
昴さんの顔が迫り唇が触れる。
体を離そうと彼の胸元を押すがビクともしない。
男と女では力の差は歴然だった。
そして舌を入れられて濃厚に絡んで来る彼に抵抗力も奪われる。
力が抜けた私を満足そうに見て、昴さんは唇を離した。
「僕だけを見てください。
ずっと僕を……」
彼の真剣な目に、私は顔を逸らした。
このままじゃ駄目だ。
私はきっと離れられなくなる。
彼から離れたくないと思ってしまう。
「やめてっ！」
自分でも驚くほど声を荒げていた。
「貴方は、私から希望を奪うの？」
驚く昴さんを前に、私は自分を止められなかった。
「絶望した世界に縛り付けようとするの？」
「違います、僕は……」
「清隆から聞いたんでしょ、私のこと……
私は私利私欲によって生まれたお人形で殺人兵器……」
そんな私は、この世界に縛られて生きる意味さえ分からない。
もう、逃げ出したいのに、それは許されない。
死を求めても、度重なる幸運がそれを阻み、私はこの世界に縛り付けられるのだ。
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作者名：壱 | 作成日時：2019年1月23日 21時
