小話 ページ21
シャーロットの部屋を出れば、離れようと思っていた人に出くわした。
「昴さん……」
「もう、出歩いて平気なんですね。
お部屋にいらっしゃらなかったので。」
「ええ、しばらくしたらここを出る為よ。」
神坂の襲撃で忘れていたが、理緒達のことが気になっていた。
月臣学園の騒動について清隆から聞かないと行けないし。
「貴方のことを、鳴海さんから聞きました。」
「！！！」
それは予期していなかったことであり、私は目を見開く。
清隆が私のことを昴さんに話した。
清隆は何を考えているつもりなのか。
私の秘密を沖矢さんに話すことで、清隆は彼を手中に収めたということか。
秘密の共有は、相手に心理的効果をもたらし双方の距離を近づける働きを起こす。
まさか私が望まない展開を、清隆は作ろうとしているのか。
いや、そんなはずはない。
清隆は私に約束してくれた。
約束してくれたんだ。
私には希望があると。
私の追い求める希望は必ず手に入ると。
神は、そう言ってくれたんだ。
「私のことを知って、それで何？」
「貴方が鳴海さんに求めているものは、自分が死ぬことなんですよね。」
「ええ、そうよ。」
「帰りますよ。」
いきなり手首を掴まれて、私は咄嗟に対抗するが、強い力で手首を縛られて痛みに動けなくなる。
「痛っ……
帰るって何？
離して！」
「ここにいたら貴方の願いが叶ってしまいますので、僕と帰るんです。」
「勝手なこと言わないでっ、！」
昴さんを睨むがどうやら彼は私の手を引いて歩いて行く。
無理矢理連れてく気の様だ。
「離してっ！」
だが、彼は聞く耳持たず。
全く何でこんなことに……
ただひたすらに歩いて行く彼に、私はもう抵抗するのをやめることにした。
この状況下で、私達の前に誰も現れないからだ。
この施設内には、ブレードチルドレン監視用のカメラがそこら中にあると言うのに、誰も現れない。
ということはすなわち、清隆の意思が働いているということ。
ただ、清隆は私を沖矢さんに守らせて、何をしたいのかは分からない。
神は何を求めるのか……
そこには既に、私との約束は忘れ去られているのだろう。
清隆は必ず私の願いを叶えると言ってくれたのに。
嘘つき……
結局大人は、子供を騙すのが常ということか。
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作者名：壱 | 作成日時：2019年1月23日 21時
