目覚め ページ17
「僕を心配させた罰を受けましょうか。」
「はい？」
そう言って、彼はさらに顔を近づけて来る。
いや、待って！
「昴さん……」
鼻と鼻がすれすれの距離で、彼は止まる。
「何ですか？」
何となく不機嫌？
でも今は困る。
どうしても彼には離れてもらいたかった。
私は両手を動かして、彼の胸板を押す。
「近い……」
「ワザとそうしてるんです。」
私の両手を拘束し、自由を奪った彼は口角を上げてニヤリと笑う。
この人確信犯だ。
「お願いだから離れて。」
私は彼から顔を逸らす。
目覚めが悪かった。
あの男の夢を見て、目の前には昴さんが居た。
分かってはいる。
あの男と、この人は違うって。
でも……
「あの時は嫌じゃないって言ってましたよね？」
その問いに答えるべく、私は昴さんに顔を向ける。
「あの時？」
もしかして……
炎の中で閉じ込められていた時に言われてたことを思い出した。
それと同時に恥ずかしかったことを思い出して、頬が熱くなるのを感じた。
あの時、私は昴さんにキスされたんだっけ？
「それに今だって……」
彼の指が私の唇をなぞる。
「ん……」
それがくすぐったくて、私はぎゅっと目をつぶった。
「こっちを向いて下さい。」
痺れを切らしたのか、彼はそう言って私に顔を近づける。
顔を動かせかいように顎に手を掛けられた私は、目を瞑る。
触れ合った唇の感触に、私は思わず顔を背けるも、頭の下に素早く入り込んだ昴さんの手によって抑えつけられて、逃げることができなかった。
「んっ……！」
唇を押し割り侵入した昴さんの舌は、私の口内をかき乱す。
そして、私の舌を捕らえた彼は私を逃がさないようにと舌を絡めて来た。
「んうっ、ふっ……」
やめてこれ以上は、嫌な記憶が思い起こされる。
分かっているのに、違うのに。
それでも、その記憶は私に恐怖を呼び覚ました。
「ぷはっ……」
唇をようやく離されて、私は俯いた。
ポタポタと落ちる涙と体の震えを感じる。
「Aさん？」
私の様子の違いに気が付いた彼が、私の肩に触れる。
パシッ
既に自由になっていた手で、私は彼の手を叩いた。
昴さんの顔をまともに見れなかった。
彼に悪いことをしたのは分かってるし、嫌な思いをさせたかもしれない。
「すいません……」
彼はそう言って、部屋から出て行った。
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作者名：壱 | 作成日時：2019年1月23日 21時
