宣告2 ページ8
薔薇園に着くと、私は当たりを見回した。
黒薔薇は何処だろう?
色とりどりの薔薇は咲いているけれど、黒薔薇は見当たらない。
赤、黄色、ピンクなど、鮮やかな色合いが私を迎えている。
いったい黒薔薇はどこに?
そうだ……!
ルイ14世は秋になるとその花弁を黒く染めるけど、普段は赤色。
それは、ベルベットの質の違いで、色が変わるのだ。
ベルベット、ビロードとも言うが。
これは元々織物で使われている言葉である。
それにより、垂直方向の糸の手触りが滑らかで、光の当たる方向により美しい陰影が出るのが特徴と言われている。
これと同じように黒バラの花弁の表面にも、縦長の細胞が垂直方向に並んでおり、この細胞には高さがあって、密度が濃いほど光が当たったときに多くの影ができる。
そうなると黒みを帯びて見える為、花弁は黒く見えるのだ。
春に咲く薔薇では、垂直方向の細胞の高さも密度もあまりなく、影ができない為、黒く見えない。
あっ、あそこだ!
『ルイ14世』
今はまだ赤いけど、きっと秋になるとこの花は黒になる。
看板の前にしゃがみ、さりげなくウエストポーチからリモコン式発煙筒を取り出してそれを足元に置いた。
リモコンは手に持って立ち上がる。
そして私は周囲を観察する為、再度見回した。
薔薇園内は、観光客が多い。
カップルや親子連れの客で園内は賑わっていた。
そうなるとここでの爆殺は、死傷者を大量に出すことになり、後処理が面倒だろう。
例え警察内部に
となると、なるべく最小限の配慮で私を殺したいはず。
そうなれば、おのずと私を殺す方法が分かるわけである。
私は薔薇園から見える高い建物を探し出した。
いくつか高層ビルが立ち並び、ここを狙いやすそうだった。
今回の
大方予想はしていたが、どうやら発煙筒を置いたのは、良かったのかもしれない。
私は手に持つリモコンの握る力を強めた。
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作者名:壱 | 作成日時:2018年5月11日 20時