呪われた体2 ページ17
手首を掴んで来たのは、言わずもがなニット帽の男。
「つっ……!!」
不味いと思った時には、体が勝手に動いていた。
掴まれた手首の手の平を開き、手首をひねって相手の手首に向かって下げるようにし、回す。
そうして自由になった手を上に挙げて片方の手も挙げると、相手の拘束から逃れた。
面を喰らったように驚いているニット帽の男の前で、私は左右の手の平を合わせて打った。
相撲でいう猫騙しだ。
パンッ!
男が怯んだのを視界に捉えながら、さらに素早くキュロットのポケットに手を突っ込み、ハンドガンを手に取ると、ニット帽の男の額に目掛けて狙いを定める。
その間、コンマ4秒。
カノンなら、コンマ3秒で相手を制圧するだろう。
彼は戦闘のプロだから。
「気安く、近寄らないで。
死にたくないでしょ。」
「ほう、素晴らしい技術だな。」
ニット帽の男は口角を上げて笑う。
まるで、この状況を楽しんでいるかのように。
余裕のある男だ。
こういう奴程、十分警戒しなければならない。
「銃を下ろしなさい!!」
そして新たに向けられた銃口が鈍く光る。
それは私に向いており、相手は眼鏡の女性だった。
この人も、特殊な人なのかしら。
「A、銃を下ろしてくれ。」
叔父さんの声が聞こえたが、私は首を振る。
「私に接近したこの男が悪いんだよ。
安全が確認できるまでは、下ろせないね。」
「Aお姉ちゃん、この人はAお姉ちゃんに危害を加えないよ。」
コナン君の言葉に、私は目を見開く。
危害を加えないか。
まあ、このニット帽の男が
もしそうなら、会った時点で特有の殺気を感じるはずだ。
でも、それがなかった。
だから彼が危険でないのは、分かっててる。
じゃあ、何が危険なのか。
それは、“私”だ。
私が危険な存在なんだ。
だから彼らの“安全”が確認できるまでは、銃は下ろせない。
私の体質で、彼らを誤って殺してしまうからだ。
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作者名:壱 | 作成日時:2018年5月11日 20時